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新しい街に着いたとき、まずは目的を定めず歩き始める。それが作家、沢木耕太郎さんの流儀だという(「深夜特急」新潮文庫)。さて、あなたが前橋駅に初めて降り立ったとする。足はどちらに向くだろう。ほとんどの人が、ケヤキ並木を県庁の方に歩き始めるのではなかろうか。
私もその一人だった。そして500mほど歩いたところで、寂しい気持ちになった。本町2丁目の交差点に横断歩道がないのだ。歩道橋を上り下りしないと並木道はたどれない。階段が苦手なお年寄りや、ベビーカーは大きく迂回を迫られる。ああ、なるほど群馬って車優先の社会なのだなあ、と実感した。
5本も道路が交わる交差点なのだから、仕方がないではないか。だいたい、歩行者はそれほどいないじゃないか。そんな反論もきっとあろう。目くじら立てるような話ではないのかもしれない。それでも、前橋を訪れた人が最初に出会う「顔」であるケヤキ並木くらい、歩行者に優しい道であってほしいと考えるのだが、どうだろう。
かつて並木道沿いにあった映画館も百貨店も、今はない。夏には駅前のイトーヨーカドーも店を閉じるという。すべてが横断歩道のないせいだとは言わないが、少なくとも、県庁所在地の表玄関に人の流れが乏しい一因には違いない。朝、駅から県庁方面に通勤する人々がケヤキ並木を避け、歩道のない細い道路をたどるのを見るたび、残念に思う。(前橋総局長・恵村順一郎)
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