朝日ぐんまって?
朝日フォトコン
コラム 
上州日和
けやき並木 [3月12日号]

 新しい街に着いたとき、まずは目的を定めず歩き始める。それが作家、沢木耕太郎さんの流儀だという(「深夜特急」新潮文庫)。さて、あなたが前橋駅に初めて降り立ったとする。足はどちらに向くだろう。ほとんどの人が、ケヤキ並木を県庁の方に歩き始めるのではなかろうか。
 私もその一人だった。そして500mほど歩いたところで、寂しい気持ちになった。本町2丁目の交差点に横断歩道がないのだ。歩道橋を上り下りしないと並木道はたどれない。階段が苦手なお年寄りや、ベビーカーは大きく迂回を迫られる。ああ、なるほど群馬って車優先の社会なのだなあ、と実感した。
 5本も道路が交わる交差点なのだから、仕方がないではないか。だいたい、歩行者はそれほどいないじゃないか。そんな反論もきっとあろう。目くじら立てるような話ではないのかもしれない。それでも、前橋を訪れた人が最初に出会う「顔」であるケヤキ並木くらい、歩行者に優しい道であってほしいと考えるのだが、どうだろう。
 かつて並木道沿いにあった映画館も百貨店も、今はない。夏には駅前のイトーヨーカドーも店を閉じるという。すべてが横断歩道のないせいだとは言わないが、少なくとも、県庁所在地の表玄関に人の流れが乏しい一因には違いない。朝、駅から県庁方面に通勤する人々がケヤキ並木を避け、歩道のない細い道路をたどるのを見るたび、残念に思う。(前橋総局長・恵村順一郎)

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上州日和
ほほ笑みの国 [3月12日号]

 自動車関係の職に就いている弟が1月、タイに赴任した。
 5年前は県内で勤めていたが工場移転に伴い九州へ。その後、東京へ移り今度はタイ行きが命じられた。最短でも3年の任期だが、こんな経済情勢だから職があるだけでも幸せと考えるべきだろう。
 出発前、家族と親せきでささやかな送別会をした。その場で弟は「(タイ行きを)断る選択肢もあったけど、自分と家族の将来のために行くことにした」と話した。空港へ見送りに行ったときは、こわばった笑顔で出発ゲートをくぐる弟をみて、思わず目がうるんだ。
 あれから約1カ月半。たまに届くメールによると、ほほ笑みの国・タイの親切な同僚たちに囲まれ、順調に仕事をしているようだ。訓練中の英語でタイ人上司に話しかけたら「無理しないで日本語で話して」と笑われたらしい。
 タイの就業時間は午前7時から午後3時まで。近くの公園には1mを超すトカゲが普通に生息しているという。日本とは全く違う文化に弟が適応できるか不安もあるが、ひと回り成長して無事に帰国してくれることを願っている。(伊藤)

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