朝日ぐんまって?
朝日フォトコン
コラム 
上州日和
平成17年11月分
学成り難し [11月25日号]

 このところ、書店のメーンコーナーに平積みされた本を手に取る気分にならず、10代のころに読んだ記憶のある、いわゆる名作を買いあさっている。
 記憶に残るとは言っても人に誇れる程の量を読んでいたわけではないので、教科書などに載っていたものが中心だ。太宰治、志賀直哉、夏目漱石、壺井栄…。内容はほとんど覚えていないため、新鮮な気持ちでページをめくっている。
 先日、井上靖の「しろばんば」を読んでいて、ある段落で思わずページが止まった。授業中に読んだ時の記憶がよみがえってきた。
 それは、どんどん焼きで、女の子が焼こうとした書き初めを、男の子たちが奪う場面。書き初めには「少年老い易く学成り難し、一寸の光陰軽んずべからず」という漢詩が書かれていた。
 授業で初めてこれを読んで以来、この漢詩は、それが訴えかける強いメッセージとともに、心の中にずっと留まっていた。
 あの授業から約20年。再び、この漢詩と向き合って、その意味を深く実感している。自分はこの間、なにを成し遂げたのだろう。果たして、一日一日を大切にしてきただろうか。今年も残すところ1カ月。師走を前に身が引き締まる思いがした。(伊藤)


快い協力に感謝 [11月18日号]

 日頃、弊紙を読んでくれている人と直に接する機会は余りない。どんな人が読んでいるのか、弊紙についてどう思っているのか、大いに気になるところだ。
 「いろんな人と、いろんなことを話せたら」そんな思いから、先週の千号で読者と共に作るコーナーを企画。発行に先立ち、オススメ上州スポット&土産を募ったところ、多くの情報が寄せられた。
 気になる情報をセレクトし、教えてくれた人に取材交渉。「おばさんだけど良い?」「顔は勘弁して」「どっちを紹介しようかしら」。反応は様々だったが、概ね好意的。対面で、電話で、情報はもちろん、家のことやら、将来の夢やら、弊紙への要望やら、いろんなことを語ってくれた。皆さん冗舌で、とっても熱い。快い協力に、感謝感謝。
 今回の企画を通して、再確認したことが2つある。一つは、読者の皆さんが質量ともに豊富な情報を持っているということ。知らない情報がたくさんあり、己の勉強不足を痛感した。
 もう一つは「皆さんと共に作れば、紙面はもっと面白くなる」ということだ。今後も、読者参加型コーナーを企画していきたいと思う。その際はご協力、よろしくお願いします。(中島)


心に響く作品 [11月11日号]

 「美術学部絵画学科日本画専攻教室」。ドアを開けると、歌手・松任谷由実の姿があった。
 先月、東京で開かれた多摩美術大 学創立70周年記念行事での出来事。圧倒的なオーラを放つステージでの彼女とは対照的に、母校のイベントに招かれたユーミンは、後輩の作品を静かに眺めていた。
 教室には、ユーミンの曲をモチーフにした作品が並び、「海を見ていた午後」の歌詞の「ソーダ水の中を貨物船がとおる」などをタイトルにした絵が飾られていた。当時は、なかなか理解されなかったらしい歌詞のイメージを、学生が見事に表現した作品の数々。恩師との対談では、「美術を学んだことで、感情描写より情景描写の歌詞が多いのかもしれない。私の歌は、聴く人が自分でイメージを膨らませてくれる」と語っていたのが印象的だった。
 その夜、中庭で行われたユーミンのライブ。情景を描写した歌詞がメロディーに乗って流れ、気がつくと、私も想像の輪を広げていた。
 朝日ぐんまも発行から22年がたち、1000号を迎えた。読む人の心に響き、読者に自然と思いを巡らせてもらえるような、魅力ある紙面を作り続けられますように…。ユーミンの曲を聴きながら思った。(餅原)


自然の恵み [11月4日号]

 先日、庭のカキを収穫した。桃栗三年…の言葉通り、種をまいて8年で結実した。初年は台風で落果したが、翌年から4個、6個、8個とささやかな収穫を得ている。今夏は青い実が枝のあちこちに顔をのぞかせ、収穫の日を心待ちにしていた。毛虫を警戒しつつ、取れたのは63個。手の届かぬ20個は虫取りの駄賃として鳥たちに提供した。
 初収穫の年、食卓に並んだ我が家のカキは、口が曲がるほどの渋さだった。遺伝の関係で、甘柿の種が甘柿に育つとは限らない。8年もの間、丹精込めて育てた我が家のカキは「干し柿専用」と判明した。 
 収穫の多さを呪いつつ悪戦苦闘で皮をむく。55個むき終えた時「ヘタに焼酎を塗っておくと渋が抜ける」と妻に教えられた。以前旅先で「会津身知らず」というカキを買ったことがあるが、これも焼酎で渋抜きしたものだった。食糧や甘い食べ物が乏しかった時代、人々は渋柿といえど粗末にせず、苦心の末編み出した知恵なのだろう。
 食生活が西欧化し「自然の甘いもの」の消費が減っていると聞く。焼酎での渋抜きは1週間。干し柿は霜の降りる頃に楽しめる。先人の苦労に思いを馳せつつ、自然の恵みを味わおうと思う。(池田)


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