朝日ぐんまって?
朝日フォトコン
コラム 
上州日和
祖母との思い出 [2月23日号]

 2月生まれの私には、同じ誕生日の祖母がいた。顔も似ていたため、孫の中でも一番かわいがってもらった。病気ひとつせず、95歳で眠るように亡くなって丸7年。命日の3月3日が近付くと、祖母のことを思い出す。
 大好きだったが、一度だけムッとしたことがある。10年以上前、仕事や人間関係に悩んでいた私は、コンビニ弁当を持って祖母を訪ねた。グチを聞いて欲しかったのだ。とりとめの無い話をしている間、祖母は好物のシャケ弁をペロリと平らげた。さらに、残っていた私の弁当までムシャムシャ食べてしまったのだ。「何て無神経な」とカチンときたのを覚えている。
 元々食が太く、細かいことは気にしない人だった。悪気はなかったのだろう。それに、明治生まれの祖父に嫁ぎ、姑(しゅうとめ)と暮らしながら子ども6人を育て、田畑を耕していた祖母にしてみれば、私の悩みなど「何のことやらサッパリ」だったに違いない。
 30代半ばになり、10年前に比べれば私も随分ふてぶてしくなった。とはいえ、仕事や人間関係で落ち込むことはしょっちゅうだ。祖母のように、相手に振り回されずマイペースに生きられたらなぁ。そんな事を思う今日この頃だ。(中島)


さび落とし [2月16日号]

 知人に熱心なマウンテンバイク好きがいる。最近「一緒に遠出しましょうよ」と誘いを受けるようになった。
 実は筆者自身、マウンテンバイク人気が始まった十数年前に取材したのを機に、勢いで購入したのだが、ママチャリ的な使い方しかしていない。乗るたびにハンドルやサドルのほこりを払うのが常だ。知人が「先日は50kmはある○○まで走って花を見てきた」「健康や環境にもいい」などと自転車の魅力を熱く語るたびに、「持っていること」すら言いそびれたままの自分が恥ずかしくて、心の中で「申し訳ない」と手を合わせる始末。
 暖冬の今年は、本格的な寒さが来る前にすでに春が来た気配。もう「忙しくて」なんて自分への言い訳はやめにして、日頃の運動不足解消のためにも、今度はこちらから彼を誘って遠出しようか。その前に次の休日は、ほこりはもちろん、細部に出てきたさびを落として油をさし、ピッカピカに磨き上げる作業から始めよう。
 年を重ねて知らぬまにたまってきた自分自身のさび落としも必要だ…。自転車が快適と感じるほどの今年の暖冬が気づかせてくれたのかな。(南保)


記憶のしおり [2月9日号]

 我が家の居間の本棚には文庫本やハードカバー、雑誌などに紛れて、一冊の参考書がある。
 大学受験の際に愛用した英文法の参考書で、高校卒業以来10年以上もの間、生活をともにしている。大学の下宿にも持ち込んだし、一度就職した企業を辞め海外放浪をした時は、リックに詰めて各国を巡った。今の仕事に就いてからも、自身の英会話熱が再燃するたびに、ページをめくっている。
 ごく一般に販売されていた、これといって特徴のない普通の参考書だが、赤ペンや蛍光マーカーで、自分用にカスタマイズされた一冊。当時の書き込みが、記憶の?しおり?のような役割を果たすのか、ちょっと読むだけで英文法が頭の中によみがえってくる。
 また、何度も口に出して覚えた基本構文や単語は、青春時代に思い描いていた夢を思い起こしてくれる。この参考書を手に取ると、他の教科のものも残しておけば良かったと後悔することもある。
 受験シーズン真っ盛り。4月からは、それぞれが新生活をスタートさせる。お世話になった教科書やボロボロになるまで使い込んだ参考書などは、押し入れの隅に保管して置いても損はしないと思う。(伊藤)


刑事裁判の現実 [2月2日号]

 無実の人が有罪になるハズがない。刑事裁判の知識が全く無いにもかかわらず、何となくそう思い込んでいた。この映画を見るまでは?。「Shall we ダンス?」など、コミカルな作品で知られる周防正行監督が11年ぶりにメガホンを取った新作「それでもボクはやってない」は、痴漢冤罪事件をテーマにした社会派の映画だ。
 主人公は26歳のフリーター。満員電車で女子高生に痴漢と間違えられ現行犯逮捕されてしまう。勾留後、起訴され刑事裁判が始まる。映画の多くを占める法廷シーンは、はっきりいって地味。だが、緊迫感あふれるやりとりはスリリングでグイグイ引き込まれる。
 嫌らしい質問をする裁判官や冷酷な検察官、あいまいな記憶を話す被害者らによって窮地に立たされる被告人。それぞれの先入観や勘違いの積み重ねで、無実の人が「犯人に」仕立て上げられていく不条理に戦慄を覚えた。「んなアホな!」と叫びそうになる一方、「十分あり得るな」とも思う。周防監督は、脚本完成までに3年を費やしたという。その徹底した取材が、映画にリアリティーをもたらしているのだろう。
 日本の刑事裁判の現実や問題点を分かりやすく見せてくれただけでなく、「人が人を裁く」ことの難しさ、危うさを改めて思い知らせてくれた。(中島)


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