朝日ぐんまって?
朝日フォトコン
コラム 
上州日和
読書 [9月26日号]

 先日、携帯用ゲーム機ニンテンドーDSの読書用ソフトを友人から譲ってもらった。
 画面に映し出される文章を読み終えると、ボタン一つで次のページが出現。本とは違い、ページをめくる必要がない。片手で読み進めるため、手軽に読書を楽しめる。しかも、BGMまで流れてくる。
 夏目漱石の「こころ」「三四郎」、芥川龍之介の「羅生門」、太宰治の「走れメロス」などの日本文学から、ビクトル・ユーゴー「レ・ミゼラブル」、アンデルセン童話、エドガー・アラン・ポーなど外国文学まで、120作が収録されている。
 最初こそは半信半疑だったが、いくつかの作品を読んでみると、意外と面白い。ページをめくる手間が省けるのと、1ページの文字が少ないので、すらすらと読める。読破した作品のリストまで記録される。また、カバンにゲーム機を忍ばせておけば、120冊の本を持っているのと同じで、まさにミニ図書館だ。
 だが、数作品を読み終えてみて気付いた。1ページ1ページをじっくりとめくっていく本と違い、読み終えた後の充実感が乏しいのだ。文学と呼ばれる作品を読むには、やはり「本」が良いのかもしれない。(伊藤)


自殺は防げる [9月19日号]

 県は今年から9月を「自殺予防月間」と定め、様々な啓発活動を行っている。取材の際、参考にした資料のいくつかを紹介したい。
 内閣府が昨年初めてまとめた「自殺対策白書」はやや表層的だが、日本の現状を知る上で重要な一冊だ。「自殺予防」(岩波新書)は、背景に潜む心の病に焦点を当てながら具体的な予防策について解説。「自殺は強制された死」など、著者で精神科医の高橋祥友氏の言葉は深く重い。「STOP!自殺」(海鳴社)は、日本に加え米国や英国などの予防実践例も紹介。各国に比べ日本が遅れていることがよく分かる。「自殺のコスト」(太田出版)は、自殺に伴うコストを徹底検証。自殺未遂の経験を持つ著者・雨宮処凛氏の視点は冷徹でシニカルだが、根底には温かさがある。
 一読して痛感したのは自殺に対する思い込み。自ら選んだ死は誰も止められないと考えがちだが、背景には多重債務や過労、いじめなど様々な要因が絡んでいる場合が多い。「追い詰められた死」とも言えるが、周囲の理解や支えで防げるものもあることに気付く。いつ身近な人や自分自身が窮地に追い込まれるか分からない。これらの資料が、自殺への認識を深める一助になれば幸いだ。(中島)


もう一人の父親 [9月12日号]

 園芸農家の主人(62)は5年前から研修生を受け入れている。途上国の若者もいるが、多くはJICA(海外協力機構)の青年海外協力隊として派遣される日本の若者たち。1回5〜6人を3週間ずつ、年4回指導している。
 主人によると、研修生は大学卒業後に就職したが社会や仕事に疑問を持ち「自分はこのままでいいのか…」と退職し、青年海外協力隊に応募した人が多い。研修の後、2年間派遣されるが、その後の身分保障はないという。「素直でまじめ。心優しい子ばかり。手紙やメールで近況を知らせてくるし、オレや女房を『お父さん』『お母さん』と慕ってくれる。実の子より可愛いやね」と、ちゃめっけたっぷりに笑う。
 教える作業は肥料や消毒、接ぎ木など山ほどある。幾らかの指導料はもらうが、遠方の農家へ見学に連れ出すこともあったりで農作業が滞ることも。「人助けの気持ちがなければやれないやね」
 床の間には寄せ書きが数多く掲げられている。大事そうに抱えてきて、「この子は福島県で語学研修中。この子はメキシコで…」と、いとおしそう。遠くへ巣立った孝行息子・娘の活躍を思いやるさまは父親そのものだ。(南保)


伝統の味 [9月5日号]

 群馬から東京の百貨店へと進出した「たむらや」(前橋市)と「原田ガトーフェスタハラダ」(高崎市)の店舗を見学するため、都内へと足を運んだ。
 平日の午後2時過ぎという売り場全体がやや落ち着く時間帯ではあったが、どちらの店もひっきりなしにお客さんが訪れていた。たむらや新宿高島屋店の石川恵三店長によると、最近は味見をしないで購入してくれるお客さんが増えてきたという。味が浸透しつつあるということの証拠だろう。
 両店の周囲を見回すと、全国的に知られている名店ばかり。日本を代表する味がひしめき合う売り場での商いが簡単でないことは、想像に難くない。
 両社が東京へ進出して約1年半、試行錯誤を重ねた結果、売り上げは著しく伸びている。短期間での急成長には、デパート関係者も驚いているという。
 しかし、両社の努力は、東京での1年半だけではない。ともに創業は明治時代。100年以上にわたり、地元で商品を作り続け、地道な商売を続けてきた。一歩一歩の積み重ねが、ゆるぎない味を生み出した。伝統によって育まれた味。それが、東京で人気を呼ぶ理由だろう。(伊藤)


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