朝日ぐんまって?
朝日フォトコン
コラム 
上州日和
茂木さんの死 [11月28日号]

 「茂木さんが亡くなった」-15日夕刻、友人からメールが届いた。体調が悪いのは知っていたが、あまりに突然だったので一瞬、ポカンとしてしまった。高崎映画祭事務局代表、シネマテークたかさき総支配人。映画好きで茂木さんを知らない県民はいないだろう。
 出会ったのは学生時代。友人が同祭ボランティアをしていたので、私も手伝ったり時折一緒に飲んだりもした。「映画館つくりたいんだよね」。酔うと決まって口にするセリフだった。夢のような話に大いに盛り上がったが、本気にした人はどれだけいただろう。
 あれから十数年。04年にシネマテークたかさきが開館した。「遂に実現しましたね」「いやいやいや」レセプションでは相好を崩しっぱなしだった。最後に言葉を交わしたのは6月。同シネマで「実録・連合赤軍」を見た後、立ち話をした。「シンドイ映画ですね」「そうだろ、すごいだろ」。熱っぽく語った顔が忘れられない。
 映画の楽しさ、夢を持つ素晴らしさ、行動し続けることの大切さ?茂木さんには、本当に多くを教わった。告別式。湿っぽくなかったのは彼の人柄ゆえだろう。遺影はジャージに満面の笑顔。大好きな塚本晋也監督と撮った写真らしい。いい顔だった。(中島)


8・12 [11月21日号]

 23年前の日航機墜落をテーマにした舞台劇「8・12“絆”」を都内で見た。赤塚真人さんが主宰する劇団「裏長屋マンションズ」が04年から続けている公演だ。
 ジャズドラマーを目指していた親友が日航機事故で死亡してショックを受けた赤塚さんが、実話を基に原作を手がけ、前橋出身の葉桐あかねさんも熱演している。内容は、都市銀行役員の父親との確執が解けて兵庫へ帰る予定だった青年が、友達との約束を果たすために1日遅れで日航123便に乗る。その結果、32分間のダッチロールののち墜落。友達は「自分のせいで彼は死んだ」と自らを責め自殺をも考える…。
 赤塚作品らしく笑わせる一方で、終盤は満席の150人が涙する感動作。「当たり前の日常が、突然失われることがある。身近な人を大切に」のメッセージがひしひしと伝わってくる。
 公演はこれまで都内と神奈川で上演しただけ。赤塚さんは「ぜひ群馬の方々にも見てもらいたい」と望むが、強力な支援態勢なくして簡単ではない。
 県内でも消防、医療、警察など事件にかかわった人が大勢いる。実現すれば、500人のホールでも満席にできる感動作なのだが。 (南保)


閉店セール [11月14日号]

 朝、新聞を読んでいたら家電量販店閉店セールの折り込みチラシが目に入った。手に取ると、一眼レフカメラが閉店価格で売りに出ている。市場価格よりも明らかに安い値段に心を動かされて家を飛び出した。
 店に着いたのは開店より1時間も早い午前9時。すでに10人ほど並んでいた。列に並びつつ携帯サイトでお目当てのカメラの最安値をチェック。全国の最安値をはるかにしのぐ安さだ。
 店員さんによると店内に入れば、早い者勝ちという。無事に商品を手に出来るかは、前に並んでいる人の動向にも左右される。午前10時、緊張と不安の中、“門”は開かれた。
 真っ先にカメラコーナーへ走り、商品カードを手にする。ホッとして後ろを振り返ると、他の人たちはカメラには目もくれずパソコンやテレビに群がっていた。このカメラ、だれも欲しがっていない…。それに気付くと急速に購買意欲が落ちた。冷静になって商品を見ると欠点ばかりが目につく。迷うこと30分。気付けばレジに長蛇の列が出来ていた。その列に並ぶ気合は、もはやなく、買わずに量販店を後にした。
 今思うと カメラの必要性は特になく、値段に釣られて衝動買いしなくて良かったと思っている。(伊藤)


棟方ワールド [11月7日号]

 先日、レストラン「芭蕉」(桐生)の漆喰壁から版画家・棟方志功の壁画を発掘する作業に立ち会った。現場の緊迫感と55年振りに現れた肉筆画の美しさに興奮した。だが、それに勝るとも劣らず面白かったのが当時、壁画制作に居合わせた人たちの話だった。
 「着物に下駄履き。田舎のじいさんって感じ」と笑いながら語ったのは、制作用の足場を組んだ大工・松井保治さん(94)。「下書きせず一気に描き上げるスピードはすごかった」。一心不乱に制作する志功の姿が伝わってくる逸話だ。
 「自作の歌を口ずさんでいたが、足場での作業は大変そうだった」と感慨深そうにつぶやいたのは、依頼主の初代店主・小池魚心と志功の間を取り持った茶道家近藤京嗣さん(79)。「内からあふれ出る、善悪を超えた世界を描いたのだと思う。お礼の反物を渡す際、覆ってしまったとは話せなかった」と明かす。
 作品や書物でしか知らなかった志功が、グッと身近に感じられた。改めて壁画を見ると、万物を包容する「宇宙」が確かに広がっている。「やっぱタダモンじゃないな」とシミジミ納得した。壁画は今月から公開されている。芸術の秋、奔放な「ムナカタワールド」に触れてみては?(中島)


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