この町で生きる[3月23日号]

たぶん、多くの方がもらい泣きしたはずです。平昌冬季五輪カーリング女子で銅メダルに輝いたLS北見のメンバーが、北海道北見市常呂(ところ)町で住民に迎えられた2月末。吉田知那美選手がこう語りました。

「正直、この町何もないよね。小さい時はこの町にいても夢はかなわないと思っていた。でも今は、この町にいなかったら夢はかなわなかったと思う」。人口4千人弱の町。体育授業でカーリングをし、農漁閑期に住民が5部リーグを戦う。五輪選手を多く輩出。でも初のメダルを獲ったのは、8年前に地元で結成したチームでした。

吉田選手の言葉を思い出したのは、桐生の街と祭りをテーマにした映画「祭りのあと、記憶のさき」(藤橋誠監督)の試写をみたからです。プロデューサーも出演者の多くも地元の住民や学生。企画からオーディション、制作、上映まで、地域の人が主体的にかかわる「まち映画」です。

八木節、祇園祭、桐生織、書店、動物園、高校野球、古民家カフェ……。伝統と継承、親と子、友達、思春期の心の揺れ……。織物のように縦糸と横糸が交錯します。「何もない、ときょうだいは桐生を出ていった。そうじゃない、良い所がたくさんあると伝えたくて応募しました」と出演した女性は話しました。

再び吉田選手の言葉から。「大切な仲間や家族がいれば、夢はかなう。場所は関係ない」。街に向き合うことは、自分の人生に向き合うこと。映画をみた感想と重なり合いました。映画は4月8日午後、桐生市民文化会館で上映されます。(朝日新聞社前橋総局長 岡本峰子)