アニメーションの空[7月26日号]

先日、東京富士美術館で開催中の「山本二三展」を観てきた。「日本のアニメーション美術の創造者」と称される山本さんは、私も子どもの頃から親しみ、繰り返し観てきた「未来少年コナン」や「もののけ姫」など多くの名作アニメで美術監督を務めている。作品中では数秒で移り変わってしまう背景美術だが、本展ではその原画やイメージボードなどに心行くまで向き合うことができた。

入念な取材とスケッチが支える山本さんの表現は、圧倒的なリアリティーに定評がある。とりわけ空と雲の描写は有名で、「天空の城ラピュタ」などのボリューム感のある独特の雲は「二三雲」と呼ばれている。

しかし今回、最も強く私の心に残ったのは、戦争を描いた傑作「火垂るの墓」の空である。不穏に曇る空、戦火を映す赤黒い夜空、晴れわたる青空さえもが不安と悲しさを充満させていると感じた。一方で、家や街並みは精緻な直線で描きこまれ、当時の人々の慎ましい暮らしを想起させる。象徴的な空と写実的な街並みの対比で物語の世界観に厚みを持たせる凄みのある表現に感銘を受けた。

今や日本を代表する文化の一つとなったアニメーション。それだけに今月18日、京都のアニメ制作会社のスタジオが放火され34人もの死者を出した事件は世界に衝撃を与えた。心から哀悼の意を表すと共に、どんな時代でも、尊い命を奪う炎で空を焦がすことはあってはならないと強く訴えたい。

(野崎律子)