クリムトとベートーヴェン[6月28日号]

上野の都美術館で開催されているウィーンの大画家クリムトの展覧会に友人と行った。

チラシ掲載の代表作「ユディトⅠ」は、金ピカの「黄金様式」を採用し、官能的な表情の女性が男の生首をつかむという、まさに迫力満点の作品だ。ほかにも「女の三世代」など見ごたえある作品がぎっしり。絵画の前でため息をつき、非日常を楽しんだ。

中でも圧巻は、原寸大の複製壁画「ベートーヴェン・フリーズ」。交響曲第9番に着想を得た作品には、金色の騎士や魔物が登場。絵物語の最後は、天使が高らかに合唱して男女が抱擁するというドラマチックな大作だ。

音声ガイドから、昨年の舞台でベートーヴェン役を演じたタレント稲垣吾郎さんの解説と共にフルトヴェングラー指揮の第九が流れてきた。「クリムトの世界観をしっかり体感したい」と、3回も再生ボタンを押し、贅沢なひと時をたっぷりと味わった。

壁画は、新たな芸術運動を目指し分離派を立ち上げた40歳ごろの作品だ。大巨匠クリムトでも、その約100年前に失聴の中で喝采を浴びたベートーヴェン先輩と対話をしながら、新たな扉を開けようとしたのだろうか、と人間にも親しみが沸いた。

高崎では、3か月後に芸術劇場が誕生する。こけら落としは大友直人指揮、群響の第九! 来ました~。クリムト同様、先達ベートーヴェンと一緒に、歴史の扉が開くのを楽しみにしたい。フロイデ!

(谷 桂)