人生を支える医療[10月13日号]

高崎市の医師小笠原一夫さんが、12日に保健文化賞を受賞しました。この分野で最も権威ある賞で、受賞者は翌日、皇居に天皇、皇后両陛下を訪ねるのが恒例です。群馬に赴任する前から、小笠原さんの在宅ホスピスの取り組みを人づてに聞いていただけに、喜ばしく思います。

9月に伊勢崎で、小笠原さんの講演を聴きました。第一声は「病院まかせでいいんですか」。病院医療にはできることと、できないことがある。病状や体力によっては、検査や治療が患者を苦しめる。患者さんの人生観を大切に、その案配を見計らい、医療と介護を組み合わせて暮らしを最期まで支えるのが在宅ホスピスです。

診療所で毎朝開く、医師や看護師、職員らの打ち合わせを見学しました。その日自宅を訪れる患者さんについて、1件ずつ皆で検討します。感じ入ったのは、患者の状態だけでなく、家でみている家族のかかわり方や様子、ペットについても考え、進めていることです。

家族ががんを患い複数の医療機関にかかって確信しますが、世の中には治すことにしか興味がない医師もいます。治らない病気を抱えて生きる患者の人生や直面する心身の苦痛について、親身に考えてくれる医療者がいることは、患者と家族にとって大きな心の支えです。

患者が自宅で暮らすことを支える「在宅療養支援診療所」は2015年で県内に227。国が在宅医療や地域包括ケアに力を入れて、増えました。真の意味で人生を支えてくれる診療所が、もっと増えることを願っています。(朝日新聞社前橋総局長 岡本峰子)