元ちゃんハウス[6月9日号]

小欄で昨秋、がん患者支援の場「マギーズ東京」を紹介しました。専門スタッフがまるで友達のように話を聴く。患者も家族も友人も、がんに影響される人は誰でも、予約なしに訪れられる場です。英国本部が公認するのは、日本でここだけ。けれど、患者や家族の不安や孤独感を支える「マギーズのような場」をつくる動きは各地にあります。
金沢市の「元(げん)ちゃんハウス」もその一つ。運営NPOの理事長、西村元一さんの愛称から名が付きました。街中のビルの一室を改装した空間は、マギーズ基準とは違うけれど、木の持つ温かみにあふれて居心地が良い。昨年12月に開きました。
大腸がん専門の外科医で病院幹部だった西村さんに、私が初めて会ったのは2009年。市民向け講演会で受付ボランティアの集合時間に現れ、手伝っていました。肩書を聞いたのは後ほど。驚きました。
「病院では医師も看護師も忙しそう。落ち着いて話も質問もできない」という患者の声を受け止め、この頃から院外での支援を考えていたようです。翌年来日した英国マギーズの代表を金沢に招いて講演会を開催。「一日マギー」などの試みを仲間ともに広げました。
その取り組みを報告講演した直後の一昨年3月、進行胃がんが分かりました。「がん患者の医師」として発言し、本やコラムを書き、患者らからの相談を受けました。家族ががんを患う私もその一人です。
5月31日に亡くなる4日前、がん検診の大切さをテーマに対談する様子を、友人らが写真などで伝えてくれました。享年58歳。笑顔あふれる収録ビデオが公になる日を心待ちにしています。(朝日新聞社前橋総局長 岡本峰子)