地域に息づく芸術の味わい

「山田かまち美術館常設展」

ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイヤモンド

山頂の観音さまに見守られながら麓の路地を入ると、煉瓦色の建物が現れます。高崎で数多くの芸術を生み出した少年・山田かまち(1960年~1977年)の作品を紹介する美術館です。ぜひ立ち寄ってみてください。

当館も以前のように全国からたくさんのご来館を頂くことが、難しくなってしまいました。しかし、今こそ地域の美術館には多くの方の心に寄り添う使命があるのではないかと思います。お客さまから、「近隣に住んでいるけど、今回初めて来ました」とのお声を頂いた時、このような状況下で目に留めて下さったご縁を感じました。アートが生まれた背景や作家の育った街の雰囲気など、地元だからこその共感や楽しみもあるはず。かまちが群馬に生きた証も作品に息づいています。

「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイヤモンド」は、ビートルズの同名の楽曲をイメージした作品です。歌詞には川に浮かぶボートや空を舞う少女が登場します。画面にはブルーを基調にさわやかな空間が表現され、どこかかまちの育った町を流れる烏川を思い起こさせます。「あの場所かな?」と景色を思い浮かべる方や、川風の感触を思い出される方もいらっしゃるかもしれませんね。かまちの故郷への想いが、メロディに乗って響いてくるようです。

若草色の裸婦

「若草色の裸婦」は、激しいタッチにかまちの心の昂りや青春のエネルギーを感じることができます。水彩画ですが、まるで油絵の具で描いたかのような筆跡。水彩絵の具は描き直しの難しい画材ですが、淡く、濃く、リズミカルに、重厚に…と様々な表現を可能にします。一瞬の閃きを逃すまいとでもいうように一枚を数分で描き上げていたかまちにとって、特別な画材であったのでしょう。この作品には、彼の手に宿った熱がそのまま閉じ込められているとさえ感じられるのです。(2作品とも7月下旬まで展示)

どの地域にも、その風土や美に根差した芸術があります。群馬県にも生まれ育った町で情熱を温め続けた少年がいました。彼の作品の魅力を、地元の空気と共に感じて頂けたらと思います。

 

高崎市山田かまち美術館 学芸員
城尾 実希 さん

群馬県立女子大学美学美術史学科卒業。専攻は美学。2014年4月、高崎市山田かまち美術館リニューアル時より同館に勤務。山田かまちの作品や遺品の研究などに取り組んでいる。

■高崎市片岡町3・23・5■027-321-0077■午前10時~午後6時(入館は午後5時半まで)■月曜および祝日の翌日は休館■一般200円、大高生160円、中学生以下および65歳以上は無料

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