埼玉西武ライオンズ・ゼネラルマネジャー 渡辺 久信 さん

「私たちが高校生だった時より、群馬の高校野球レベルは上がっていると思います。プロ入りする選手もいますが、もう少し頑張ってもっと活躍してほしいですね」と笑顔でエールを送る渡辺GM。2008年、監督として日本一達成した時の胴上げ写真やトロフィーの前で=埼玉・メットライフドーム

「まだまだ発展途上。目指すところは、永続的に優勝争いするチームです。今、西武は盛り上がっていますよ」

 

今年1月1日付で、埼玉西武ライオンズ初となるゼネラルマネジャー(GM)に就任。チーム編成など最終的な決定権を持つ総責任者となった。1980~90年代の西武黄金期に速球派エースとして活躍。監督としても就任1年目の2008年に日本一に導くなど数々の功績を残してきた。監督退任後、13年からシニアディレクター(SD)、17年から編成部長を兼務し、スカウティングや選手強化、育成などでも手腕を発揮。昨シーズン10年ぶりのリーグ制覇、観客動員数(主催試合)も過去最多の約176万人(実数発表を始めた2005年以降)を記録した。勢いにのる若獅子軍団の舵取りを担うGMに、意気込みやチーム、野球への思いなどを聞いた。

【永続的に優勝争いできるチーム】

Q球団初のGMに就任が決まった時のお気持ちは

ドラフト候補の発掘や国内外のスカウティングなどに携わってきましたが、これまで以上に責任が重く、身の引き締まる思いがしました。始まったばかりなので、まだSDと呼ばれることが多いですね(笑)。

QGMの役割とは

GMといっても金銭面を含めすべてを任されるメジャーとは違います。日本では、金銭以外の組織づくりや選手獲得などチーム編成の最終決定をする総責任者です。

Qどのようなチーム作りを目指していますか

各年代バランスよく選手を補強、育成して永続的に優勝争いできるチームを目指しています。現場首脳陣の意見をしっかり聞くことはもちろん、様々なシステムを導入し、試合や選手をデータ分析して戦略を練っています。

【最後まで飽きさせない野球】

Q昨季10年ぶりのリーグ優勝の要因は

最後まで強力打線でいけたのが大きく、補強面も見事に当たった。打率だけでなく、盗塁もリーグトップで、バランスいい打線に機動力を絡める攻撃ができました。その反面、投手陣は苦しかったが、何とか踏ん張ってくれた。チームと球団、フロントが同じ方向に向かい、一つになれたシーズンでしたね。

Qクライマックスシリーズ(CS)でソフトバンクに敗退、日本シリーズ出場を逃しました

力の差が出ました。シーズン中、ソフトバンクはケガ人が出てベストの状態ではなかったが、CSに照準を合わせてきた。うちはまだまだ発展途上。これから伸びていくチームだと思います。

Q今季に向けての課題は

若い投手が多く、1軍で経験を積んで自信を持ってほしいですね。2、3年後がすごく楽しみ。投手力あるチームになる可能性は十分あります。12球団一の打線だと思いますが、まだここ1、2年のこと。まだまだ伸ばせる部分はあります

Q今季鍵となるのは

(続投する)辻発彦監督かな。手腕の問われどころじゃないですかね。昨季は裏方のコンディショニング部門がケガをしにくいトレーニングメニューをしっかり組んでくれたおかげで、大きなケガ人が出ず優勝できました。シーズンは長いので、ある程度ケガ人が出るのは当たり前。出た時に選手をどう使い、チーム力を維持するか辻監督の采配が鍵になりますね。

Q2軍監督に松井稼頭央さんが就任しました

現役引退後初めてのシーズン。メジャー経験もあり、人間的にも素晴らしい。私も2軍監督経験がありますが、苦労した方がいい。若い選手を扱う上でハプニングが沢山あると思う。どういう対処をするか今から楽しみです。2軍で居心地がよくては逆に困りますね(笑)。

Q主力の菊池雄星投手、浅村栄斗内野手、炭谷銀仁朗捕手がポスティングやFAで抜けましたが、補強の部分ではどのよう に考えていますか

炭谷がFAで移籍したことで、巨人から内海哲也投手を獲得。オフには先発として期待している元メジャーのザック・ニール投手が加入しました。戦力のダウン率をいかに減らすかは若手にかかってくると思います。浅村のセカンドのポジションを狙ってギラギラしている若手内野手が6、7人いるので、今季誰がレギュラーを獲るか楽しみです。

Q内海投手に期待するところは

一番は選手としての力を評価しての獲得です。投手としてのリーダーシップがある選手。若手投手陣が練習する姿を見て、自分たちの足りない部分を感じてほしいですね。

Q今季入団した新人への期待は

昨季の結果を踏まえ、一番の補強ポイントである投手中心(育成含め10人中投手6人)に獲得しました。新人への過度な期待はないです。プロの世界はそこまで甘くない。現場首脳陣はどのくらい力があるか見たいので、1軍キャンプに大学と社会人出身選手は参加しています。

Q前橋育英高出身の髙橋光成投手は昨季2勝にとどまりましたが、今季はどうでしょう 

今季から背番号を17から西武のエース番号13に変更しました。本人が慕う西口文也(現1軍投手コーチ)が背負ってきた番号です。「この番号を付ける意味が分かるね」と伝えています。今季の活躍を期待しています。

Qリーグ連覇、日本一奪還へ向けてチームに必要なことは 

パ・リーグの覇者ですが、日本シリーズに出られないとリーグ制覇しても負けたような気になる。日本シリーズ出場のためには、ソフトバンクとの力の差を埋めないといけない。今季は主力が抜けて新しく入れ替わりますが、若いチームなので想像がつかないくらい伸びしろがあると思います。

Qプロ野球を盛り上げていくために必要なことは 

昨季は、終盤で逆転するだろうと期待を持たせる試合が多かった。西武ファンにとっては最高のシーズンだったと思います。昨季の観客動員数(主催試合)は過去最多。最後まで飽きさせない野球をしていたことがファンを惹きつけたのだと思います。埼玉西武ライオンズは今、盛り上がっていますよ。

【楽しい野球を世界に】

Q今年3月に少年野球の第1回渡辺久信杯が行われる予定ですが、子どもたちに向けてどのような思いがありますか

小学6年生を対象とした大会です。小学校から中学校に上がる時期が野球を続けるか続けないかの分岐点になっていると思います。技術を高めるだけでなく、楽しい野球を中学でも続けてほしいですね。

Q5月8日に前橋でロッテとの公式戦。群馬開催は今年で4年連続です

圏央道ができて前橋まで1時間半くらい。ホームグラウンドと言ってもいいくらいアクセスがよくなった。群馬でも西武ファンがだいぶ増えたと感じます。西武の面白い野球を見てもらい、今度は所沢まで足を運んでもらいたいですね。

Q野球への思い、ファンに向けてメッセージをお願いします

2020年東京オリンピックで競技種目に野球が復活しました。野球人としては特別な思いがあります。野球はこんなにも面白いスポーツなんだと世界の人に知ってほしい。そのためには日本から世界に向けて発信していかないといけないと感じています。将来的にどの国でも野球が日常的に行われるメジャーなスポーツになってほしい。私個人が思ってもどうにもなりませんが、皆さんと大きな目標を目指していけたらいいですね。

文・撮影 林哲也

【プロフィル】Watanabe Hisanobu
65年桐生市(旧新里村)生まれ。前橋工高-西武ライオンズ-ヤクルトスワローズ-台湾・嘉南勇士。西武黄金期の速球派右腕。最多勝3回(86、88、90)、最多勝率1回(86)、最多奪三振1回(86)、ベストナイン1回(86)、ゴールデングラブ賞1回(90)。96年6月、対オリックス戦でノーヒットノーランを達成。08~13年埼玉西武ライオンズ監督、就任1年目で日本一。13年シニアディレクターに就任、17年編成部長を兼務。現在、ゼネラルマネジャー。東京都在住。