平昌冬季五輪スピードスケート女子チームパシュート金メダリスト 佐藤 綾乃 さん

「ネイルは一昨年からはまり、高崎、帯広、長野と練習拠点が変わってもサロンに通っています。髪のトリートメントも欠かさず、買い物も気分転換になりますね」と女子大生の一面も見せる砂糖選手。手にするのはパシュートで獲得した金メダル=高崎健康福祉大学トレーニングルーム

「感謝の気持ちと恩返ししたいという気持ちで、ここまでの結果が出せた」

今年2月に韓国で開かれた平昌冬季五輪に日本代表として初出場し、スピードスケート女子チームパシュートで金メダルを獲得。五輪新記録という偉業に加え、冬季五輪日本女子で史上最年少金メダリストという輝かしい称号を得た。メダルを期待されたマススタートでは、準決勝で転倒に巻き込まれるアクシデントに見舞われたが、3000メートルでは自己新のタイムで8位入賞する活躍を見せた。保育士を目指す大学生でもある佐藤綾乃選手に、世界一までの道のりや今後の目標などを聞いた。

 

【人生で初めての緊張】

Q金メダルを取った時のお気持ちは

すぐに実感が湧きませんでしたが、ここまでやってきて良かった、自分に自信を持っていいんだ、と思えた瞬間でした。

Q決勝のプレッシャーは

前日のミーティングで決勝で滑ることが決まり、(コーチの)ヨハンの提案で、普段は先頭1周ですが、1周半滑ることに。準決勝、決勝は同日で、準決勝に出ない私が、負担が大きい先頭を長く滑るのは効率的ですが、直前まで不安な気持ちを抑えきれず、人生で初めて緊張しました。会話ができず、周りから死んだ顔になってると言われました(苦笑)。

Qプレッシャーの中、どのようにレースに向き合いましたか

メンバーやスタッフが「何緊張してるんだ」とおちゃらけた感じで和ませてくれ、リラックスできました。レース前に円陣を組み、(準決勝出場の菊池)彩花さんがハグして「頑張ってこい!」と声を掛けてくれました。硬くなって自分のレースができないのは嫌だったので、直前には落ち着いてレースに臨みました。ネイルが趣味で、オリンピックでは、右爪を五輪カラー、左爪は金のグラデーションで気合いも入れました。

Qレース前のリラックス方法は

毎回、ジェネレーションズの曲をシャッフルで聴いて気持ちを奮い立たせています。アップ中に目を閉じて心の中で「できる」と言い聞かせていますが、決勝は、「できる、できる」と声が出ていたと(髙木)菜那さんに言われ、恥ずかしかったです(笑)。

Q決勝のレースは途中追う展開だった

指示はないので、相手(オランダ)のことは全然知りませんでした。自分たちのレースに集中していました。途中のキープ、最後までスピードを維持できるのが日本チームの強さで、見ている人にも面白いレースを届けられたと思います。

Qゴール間際、必死の表情でしたが

本当にしんどかった(苦笑)。普段より多い先頭の1周半と緊張もあって。最後のコーナーも離されかけましたが、(後方の)菜那さんに押してもらい、必死についていきました。後半先頭の(髙木)美帆さんがスピードを上げるのは分かっていましたが、体がいっぱいいっぱいでした。

Q勝因は

日本チームにしかできない一糸乱れぬ隊列、交代の仕方など年間300日の合宿で磨き上げてきたことが、本番でもできた結果です。

Q3000メートルでは自己新のタイムで8位入賞しましたが

世界のトップと滑ったことがない種目で8位入賞は、パシュートの金メダルよりもあり得ないことで、自分にとって価値がありました。一番最初の種目で気持ちも上がり、パシュートにつなげられたと思います。

Qマススタートで転倒に巻き込まれたが

(五輪前の)W杯で優勝できたという自信もあったので、とても悔しかったです。でも、転んだから4年後の北京五輪での新たな目標ができたと今では思えるようになりました。雪辱を果たしたいですね。

【完璧な滑りで4年後も金】

Qナショナルチームでの経験は

2年前にナショナルチームに入り、1年目はついていくことに必死でした。パシュートでも離されることが多く、全然結果が出せずチームに入っていて申し訳ない気持ちでした。

Qどうやって立ち直りましたか

「オリンピックでパシュートを滑りたい」という気持ちです。自分の努力だけでなく、親や友人、先生やコーチ、本当に沢山の人に助けられました。感謝の気持ちと恩返ししたいという気持ちが大きかったので、ここまでの結果が出せたと思います。

Q平昌五輪を振り返って

吸収できることが多い大会でした。初めての緊張も体験できましたし(笑)。今回、嬉しい思いと悔しい思い、まだまだいけるなという欲、様々な思いを経験できました。

Q2022年、北京五輪の目標は

まだ遠く、大きな目標ですが3000メートル、マススタートの個人種目でメダルを取りたい。パシュートは、記録を狙って完璧な滑りでまた4年後、金メダルを目指して頑張ります。

【一つ一つ新しいことに挑戦】

Q3月の高崎でのパレードの気持ちは

当日は雪も降っていたので、1万5千人もの多くの方が駆けつけてくれるとは思いませんでした。想像を超える人数の声援に胸にグッと込み上げてくるものがありました。

Q市庁舎の式典では、子どもたちからサプライズのプレゼントがありました

子どもたちから手作りのメダルやブーケをもらえると思っていなかったので、本当にうれしかったですね。保育士になる勉強をしているので、将来、子どもたちが誰かのために手作りする手伝いを先生の立場で一緒にできたらと思います。プレゼントは今でも部屋に飾っています。

Q保育士の勉強との両立は

大変ですが、先生たちの理解があり感謝しています。中途半端にしたくなかったので、遠征先で集中して課題もこなしました。

Q所属する高崎健康福祉大の入澤孝一監督の存在は

課題点や基本的なフォームなど指導してもらっています。スケートと勉強の両立ができるように、学科の先生と連絡を取り合ってくれたりと本当に感謝しきれないです。

Q今後の課題、練習は

フィジカルが弱いので、筋力をつけて最後までラップを維持できる体力をつけることです。トップ選手と比べ技術面も下手なので、一つ一つ新しいことに挑戦したいです。ナショナルチームの活動がまだわからないので、当面は学校でウエイトやスライドボード、外で自転車でのトレーニングが中心になります。道をよく知らないので、アップダウンのあるコースがあれば教えてほしいですね。

Qスケートの魅力は

兄の影響で小学1年から始めましたが、楽しいより、勝ちたい気持ちがあるから続けていられます。パシュート、マススタートは駆け引きが面白く、ほかにも様々な競技があり、どれも奥深く、夢中になれますね。

Q群馬のファンにメッセージを

オリンピックの応援、本当にありがとうございました。感謝の気持ちでいっぱいです。皆さんに、少しでも勇気や感動を届けられたのかなと思います。これからもスピードスケートに興味を持ってもらえると嬉しいです。想像以上のスピードや迫力をぜひ会場で体感してほしいですね。スケートリンクでお待ちしています。

文・撮影 林哲也

【プロフィル】Sato Ayano
96年北海道出身。釧路北陽高-高崎健康福祉大。12年全国中学校スケート大会1500、3000メートル優勝。15年全国高等学校スケート選手権大会1500、3000メートル優勝。16年全日本ジュニアスピードスケート選手権大会総合優勝。今季W杯チームパシュート世界新記録樹立、4戦全勝、マススタート2勝。平昌五輪チームパシュートでは髙木菜那、美帆姉妹、菊池彩花と出場し、決勝で五輪新を記録して金を獲得。大学4年生。高崎在住。