広辞苑[2月9日号]

調べものはスマホに頼る日々。気づくと自宅にまともな国語辞典が1冊もないことに気付いた。子どもが家で引いている姿もほとんど見ない。危機感を覚え、せっかくならと先日、10年ぶりに大改訂された「国民的辞典」を思い切って書店で購入した。

最新の「広辞苑第七版」は、漢字小辞典などを納めた付録も含めると厚さ10センチ、重さ3・3キロ。さらに初回限定特典として、作家・三浦しをん氏が同版の改訂作業に携わる現場を紹介する文庫型のおまけがついてきた。

言葉の解釈に加え、図版や書体のデザイン、製本、辞典を収める函の製作に至るまで綿密な検討が繰り返され出来上がっていく過程が分かり、興味深い。長い年月をかけようやく本屋に並ぶ辞典の厚みと重みは、多くのプロフェッショナルたちの情熱の重みなのだと改めて感じた。電子版のような画面上に映し出される文字では体感できない。編集に汗を流した人々に思いを馳せることができるのは、この手でゴロンと辞書を広げた瞬間なのだ。

全25万語のうち、今回初採用されたのは1万語。その中に「富岡製糸場」の見出し語があると知り早速引いてみた。吸い付くような独特の手触りを楽しみつつ真新しいページをめくると、語釈に「世界遺産」の4文字がしっかりと刷られていて嬉しくなった。

当面はすぐ手に取れるリビングに置いておくことにした。家族が辞書を引く楽しさを知るきっかけになるといい。

(上原道子)