放送作家・脚本家 堀 雅人 さん

「『スキヤキフォース』のキャラとキャスティングは、かなりエッジを効かせています。群馬の名所や名物と共に、そこも楽しんで欲しい」と堀さん。行きつけのカレー店「BOTA ALTA」の前で=東京

「笑いに音楽や外国文化や最新カルチャーなど自分の好きなものを詰め込んで、ちょっと洒落た感じのものを作りたい」

群馬県の「すき焼きアクション」をPRするアニメ「戦隊ヒーロー スキヤキフォース」(群馬テレビで毎週月~金曜午後6時35~40分放映中)の構成、シナリオ、ダイアローグ演出を手掛けている。和牛やネギ、白菜などの具材からなる戦隊ヒーローが群馬の各地を巡り、人々にすき焼きを振る舞い世界に愛を広めるというコメディー&シュールな短編で、キャラたちのユルイやりとりが人気だ。「めちゃ2イケてるッ!」(日本テレビ)など主にバラエティ番組の放送作家や脚本家として活躍する堀さんに、スキヤキフォースの魅力や脚本への思いなどを聞いた。

【一面的でないところを表現】

Q「スキヤキフォース」のシナリオを担当することになった経緯を教えて下さい

昨春まで日本テレビ「ZIP!」内の「あさアニメ」 で脚本を担当していましたが、その時一緒に仕事 をした宮崎吐夢さんと、「もっと何かやりたいね」 となって。数社のアニメ制作会社に企画提案した ところ、「STUDIO4°C」からオファーを頂き、昨春から共同で制作に取り掛かりました。スキヤキというお題は頂いていたが、戦隊モノのコンセプトなどは僕が提案した完全オリジナル。毎回、舞台やテーマになるのは草津温泉、 分福茶釜、焼きまんじゅうなど群馬の名所や名物。実際、行ったことがあったり食べたことがあったりはしますが、話が作りやすかったりはしませんでした(笑)。

Q戦隊ヒーローや敵役のキャラがユニークです

通常、戦闘ものの女の子は1人ですが2人にしたり、LGBT隊員を入れたり、ちょっと変わった設定にしています。それは、女性や世の中の一面的ではないところを表現したかったから。敵役のシュークリームは、4℃の田中栄子社長の思いつき。

なぜ、スキヤキにシュークリーム(苦笑)と思いますが、 敵ボスのキライダーが野菜など食わず嫌いな子供ですから、 そんな子供が大好きなスイーツを手下にさせるんだとか、共同で作ったことでプラスされたアイディアですね。

Q声優たちも個性派ぞろいです

僕が今、一緒に仕事をしたいと思う方々に声を 掛けさせて頂きました。宮崎吐夢さんは唯一無二の俳優さんだし、根本宗子さんと金山寿甲さんはとても注目されている劇作家でもあります。かなり尖ったキャスティングになっています。

Q制作上、心掛けた点や大変だった点は

なるべく笑えるもの、そして肯定的なものにしたいと思いながら作りました。個人的にナンセンスな笑いと構造がしっかりしている話が好き。延々ダラダラと会話が続くシュールなものは作風ではないので、登場人物同士の関係性を基に物語が進んで行き一応の出口(さげ)がある内容になっています。難しかったのは、土地の話を入れなくてはいけなかったり、子どもが楽しめる内容を意識したり、色々経由しないといけない地点があり、アニメに関わる方の「思い」や「真意」を噛み砕いて歩み寄って形にするという作業が今までの仕事より多かったところです。

【お笑いや活字文化に開眼】

Q同作の見どころは

コントを作るようにアニメ制作現場で声優陣に演出をつけました。その音声に絵を付けてもらうやり方は他のアニメとは違います。多彩な役者が集まってくれたので、キャラたちが自由自在に動き 回り画面にグルーブ感が生まれていると思います。

Qどんなお子さんでしたか

テレビ好きでドリフやひょうきん族、元気が出るテレビなどを良く見ていました。中学時代は雑誌「宝島」や深夜番組にハマり、ヒップホップや、いろんなサブカルチャーを知り、お笑いや活字文化に開眼。80、90 年代のテレビや雑誌からの影響は強く、今でも僕の創作べースになっています。

Q放送作家、脚本家になろうと思ったきっかけは

大学在学中、渡辺祐さんや川勝正幸が在籍する編集プロダクションに入りました。当時、サブカルのハブ的存在だった編プロで雑誌編集に携わりましたが整理整頓が苦手で(苦笑)。編集者に向いてないと音楽ライターに転身し、いろんな雑誌に書いていたコラムが 「めちゃめちゃイケてるッ!」の番組スタッフの目に留まりました。01年から関わらせて頂きましたが以来、主にバラエティ番組の放送作家やアニメ番組の脚本などを担当しています。その時々でやりたいこと、できることをやっていたら今に至るという感じですね(笑)。

Qご自身はどんな脚本家だと思われますか

気づくと原作があってそれをアレンジする作品を多くやっています。笑いや時事ネタ、批評的要素を入れてパロディにできるところが面白いし、良いアイデアが浮かぶとホント楽しい。自分が面白いと思えるコントを書いている時はストレスを感じないですね。編集者時代はゼネラリストのつもりでいたけど、最近はコントを書く以外大したことはできないなと気付きました。コントの場合、笑えるものを形にできるかが全てなので、町工場の職人さんと変わらない。よく言えばアルチザン的な(笑)。ただ、気難しいおじさんになっちゃうのは避けたいですけど(笑)。

【成り行き任せに自由に】

Q笑いやコントに魅了されるのはなぜでしょう

ドリフのしょうもないコントが物凄く面白かっ たのを幼心に覚えています。刷り込みなんでしょ う(笑)。お笑いって純粋に楽しいし、観る人の心を解放してくれる。特にナンセンスなコントを考えつくと、何か抜け道を見つけたような気分になる。自分の人生を確実に豊かにしてくれたもの。 だから、ずっと離れられないんでしょう。

Qアイデアはどうインプットするのでしょうか

映画、演劇、ライブ、雑誌、本など毎日、何かしら観たり聴いたり読んでいます。引っかかったものはメモしたりスクラップしたり。仕事と休みの切り替えが下手で、常に考えごとをしてしまいます。

Q今後やってみたいことは

笑いに音楽や外国文化や最新カルチャーなど自分の好きなものを詰め込んで、ちょっと洒落た感じのものを作りたい。どういう形にするかは模索中。放送作家になって15年経ちますが、こんなにコントばかり書くとは思ってもいませんでした。これからも、成り行きに任せ自由にやっていくのが良いかなと思っています

Q群馬のファンの皆さんにメッセージを

今、テレビや雑誌で「ローカル」が注目されています。「スキヤキフォース」もその流れにありますが、キャラやキャストはかなりエッジを効かせています。「ローカル」の奥にある思いに気付いてもらい、見た人に何かしら刺激を与えられたら嬉しい。面白がってもらえるものを誠実に作っているので、是非ご覧になって下さい。

文・写真/中島美江子

【プロフィル】Hori Masato
72年前橋生まれ。渋川高校卒業。大学在学時に編集プロダクションで雑誌編集に携わる。フリーの音楽ライターを経て、01年から「めちゃめちゃイケてるッ!」の放送作家に。11~06年まで日本テレビ「ZIP!」内の「あさアニメ」で脚本を担当。現在、群馬テレビで放映中のテレビアニメ「戦隊ヒーロースキヤキフォース ぐんまの平和を願うシーズン」の構成、シナリオ、ダイアローグ演出を務める。東京在住。