日本画の旅に出かけてみませんか?

収蔵作品展「旅する風景」

風景画は実際の景色を題材にした作品だけでなく、実在しない風景や作家の胸中の情景を描いた作品も含まれ、そのモチーフは無限です。私たちは風景画を観ることで時空を超えて旅をすると共に、自分では気づかない、あるいは見ることのできない様々な風景に出会うことができますが、これは美術鑑賞の醍醐味といえるでしょう。

守屋多々志《遊行柳(芭蕉)》1989年

この展覧会では、当館が収蔵する日本画作品から風景画を4つのコーナーに分類し紹介しており、「水辺を歩く」では、滝や海、河川や湖沼などを描いた作品で清らかな水の表情をお楽しみいただいています。守屋多々志《遊行柳(芭蕉)》は、江戸時代に活躍した俳人・松尾芭蕉が『奥の細道』紀行中に栃木県那須の蘆野の里を訪れ、平安時代の歌人である西行が歌を詠んだ柳のもとで「田一枚 植ゑて立ち去る 柳かな」と詠じた際の様子を描いています。傍らには旅に同行した門人の曾良が座り、ふたりの眼前に広がる水田には植えられたばかりの青々とした苗が風に揺れ、煌めく水は金で表わされています。

髙橋常雄《晨(上高地)》1984年

山岳風景を集めた「山を旅する」では、豊かな季節感に彩られた作品により山の清澄な空気を味わうことができます。前橋出身の髙橋常雄が長野県安曇野村上高地の夜明けを描いた《晨(上高地)》は、大正池に立ち込める朝靄と早朝の張りつめた空気を捉えています。丹念に色を重ね、金泥を効果的に用いて神秘的なイメージを表現しており、第35回群馬県美術展で文化事業団会長賞を受賞しました。

このほかに、「暮らしの情景」では人々の生活が垣間見える風景を、「情景の中へ」では作家の心情や印象が投影された情景や伝説上の風景、理想郷を具現化した作品などをご紹介しています。

現在、新型コロナウィルスの影響で自由に旅を楽しむこともままならない状況なので、日本画で旅の気分を味わっていただければと思います。さあ、どこへ出かけましょうか?

 

高崎市タワー美術館学芸員
青木 忍さん

2001年の開館時より高崎市タワー美術館に勤務。主な担当展覧会に「文化勲章-最高峰の日本画家たち」(2013年)、「和装の美-松園・清方・深水を中心に」(2018年)、現代日本画家を特集する「トップランナー」シリーズ(2019年)など

■高崎市タワー美術館(高崎市栄町3・23)■027・330・3773■6月28日まで■午前10時~午後6時(金曜日は午後8時まで)■月曜休館■一般200円・大高生160円・65歳以上の方と中学生以下は無料

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