毎アルそれから[1月18日号]

映画「毎日がアルツハイマー」(略して「毎アル」)を知ったのは7年前。認知症とともに生きる方々を取材していた頃です。アルツハイマー病の母との日常を撮影するのは、関口祐加監督。「良妻賢母だった母が解放され、魅力的な被写体になった」という表現にひかれました。

介護のために29年住んだ豪州から帰国し、10代の息子とは別居。母は夕食を食べたことを忘れ、深夜に台所を物色する。風呂に入らず、外出を渋る。排泄の粗相を繕い、トイレ紙を大量消費する――。事実を並べると深刻なのに、笑いに包まれます。

映画から伝わるその感覚は、認知症ケアの達人を全国に訪ねて各所で味わいました。共通するのは「個別ケア」。病名や症状でひとくくりにせず、一人ひとりの人生を背景に、必要な手助けや薬がじっくり見極められる。体を縛られることは、決してありません。

その頃取材し、記事に登場していただいた北欧在住の日本人男性の近況が届きました。7年前はアルツハイマー病も初期。デイに通いながら妻と2人暮らしでした。その後も自宅で暮らし、今93歳。起き上がることが少なくなり、食も口に入らなくなった。別れが近いのかも……という、友人からの涙のメールでした。

さて、「毎アル」の母・宏子さんはその後、どうなったのか? 介護する関口監督が長期入院し、友人が逝き……。最期を見つめた第3作の「完結編」が19日から、前橋シネマハウスで上映されます。初回上映後、関口監督が舞台あいさつをする予定です。

(朝日新聞社前橋総局長 岡本峰子)