消しゴム版画イラストレーター とみこはん さん

とみこはん提灯を手に笑顔のとみこはん=個展「味こよみ」展会場(2016年11月22~12月5日、西武渋谷店)

素朴な絵と色合いで観る人の心をホッコリ

ほのぼのとした絵柄と素朴な色合い。観る人の心をホッコリさせる消しゴム版画の作者は作品同様、そばにいる人を温かく包み込む大らかさがある。食べ物や人物のモチーフを中心とし、雑誌や書籍、テレビなど様々な分野で幅広く活躍中だ。数年前からは郷里でも精力的に仕事に取り組むとみこはんさんに、消しゴム版画への思いや今年の夢などを聞いた。

「行く先々で出会った人やもの、味などをはんこにして、旅行記を各のが夢」

きっかけはナンシー関さんの個展

Q消しゴム版画・イラストレーターになったきっかけは

小さい頃から絵を描くのが好きで、ずっと趣味で描いていました。消しゴム版画に興味を持ったのは大学時代。消しゴム版画家でコラムニストだったナンシー関さんの個展を見たのがきっかけです。消しゴムという身近なものがアートになっているのと、コラムが凄く面白くて。それまで版画は一度もしたことなかったのですが、普段自分が描いている似顔絵や落書きを消しゴムに彫って、はんこにしたらどんな風になるのだろうと、気軽な気持ちで始めました。

Qデビューはいつですか

仕事として本格的に制作をスタートしたのは2010年からです。大学卒業後は芸能事務所でマネジャー業をしていました。消しゴム版画は趣味で続けていたのですが、ある時「好きなだけ消しゴムはんこを彫る人生があったらいいな」と思い、一念発起で作家活動に専念することにしました。

Q昨年11月に出版された水道橋博士さんのエッセイ集「はかせのはなし」(KADOKAWA)で挿絵を担当されていますね

表紙の装画と水道橋さんのコラムに40個のイラストを消しゴムはんこで彫りました。事前にコラムをじっくり読み、イメージを膨らませながら作りました。2009年から、現在までの変わりゆく東京や、家族の風景がつづられていて、水道橋さんの目線が見える、温かみのある1冊になっていると思います。

Q毎年、オリジナルカレンダーを制作し、年末に原画展を開いていますね

毎月ワークショップの講座をさせて頂いていることもあり、2011年から西武渋谷店で定期的に個展を開催しています。モチーフは食べ物が多いですね。季節感も出しやすいのと、何より、自分が食べることが大好きなので、作っていて楽しいです(笑)。食べ物を彫っていると「『かわいい』はんこもいいけど『おいしい』はんこもいいよね」と声をかけられることが多いです。

Q2017年カレンダー原画作成時のエピソードなどあれば教えて下さい

基本は自分が食べたいものや、季節の物、さくらんぼなど、友達の出身地の名産を彫りました。食べ物の思い出はたくさんあるので、作っていて楽しいです。お料理の盛り付けをするような感じで、紙にはんこを押していきます。

Q西武渋谷店ではカレンダー展以外にワークショップも行っていますね

5年前から月1回、消しゴムはんこ教室を行っています。小学生から70代まで、参加者の年齢層はかなり幅広いですね。「一人よりみんなで作る方が楽しいし刺激になる」と参加されるお客様が多いです。毎回、テーマを決めるのですが、1月は食べ物はんこを彫る会です。

Q消しゴムはんこの魅力は

身近な道具と材料でつくれるところですね。試し押しで「本当に出来ているかな?」と確認する瞬間が一番ワクワクする。消しゴムはんこが木版画と違うところは、フリーハンドで好きな場所に繰り返して同じはんこを押せるということ。はんこを押す位置や色合いは作品ごとに違うので完全に再現することは絶対出来ない。世界に1つとして同じものがないというところも魅力ですね。

Q逆に難しさは

彫るのも押すのも全て手作業なので、9割5分出来ていても残りの5分を間違えると全部やり直しになってしまうところが難しいところであり怖いところです。私は彫る時より押す時の方が何倍も時間がかかりますね。色が全然決まらない時もあれば、紙にインクを落としてしまったりゴミが入ってしまい台無しにしてしまうことも(苦笑)。小さなミスが命取りなので、完成に至るまでは1つ1つの作業を慎重に行っています。

Q制作の手順を教えて下さい

下絵をかく、トレーシングペーパーに図案を清書し、消しゴムに転写する、彫る、押す、で終わり(笑)。この4ステップで、完成です。

Q制作はいつするのですか

日によって違うので、時間などは決まってませんが、集中すると朝からぶっ通しで12時間とか彫る時もあります。朝方、ラジオを聞きながらの作業が多いですね。

Q仕事をする上で大切にしていることは

依頼されたお仕事に関しては、消しゴムはんこの魅力が伝わるように作る、という一点ですね。個展では、基本的に自分が好きなもの、興味があるもの、食べたいものを作ります(笑)。あとは、楽しんでやることかな。素朴で温かみがあると言って下さる方が多いのですが、見てくれた人が、それぞれ何か感じてくれればいいなと思います。「おなか減ったね」でも、「お寿司たべたい」でもなんでも。匂いのするような、はんこを彫るのが目標です。

旅モノに挑戦したい

Q最近、郷里での仕事が増えていますね

2015年4月から2016年3月までの1年間、エフエム群馬の「ユウガチャ!」にパーソナリティーとして月1回出演させて頂きました。それが縁で、昨年からエフエム群馬が隔月で発行するフリーペーパー「STAY TUNED!」の表紙イラストとコラムを担当しています。文化祭や新春など、各号のテーマに合わせ自由に彫らせてもらってます。絵に加えて、文を書くのは毎回緊張しますね。でも、「紙面、楽しみにしてるよ」なんて声をかけられると「次回も頑張ろう」という気持ちになります。単純ですけど。やはり、地元でのお仕事は励みになりますね。ラジオ出演のおかげか、昨年から自治体のイベントや企業のワークショップに呼んでいただく機会が増えました。今年も群馬でお役に立てれば良いなと思うので、ご興味ある担当者さま、気軽にお声がけ下さい(笑)。

Q群馬はどんな場所ですか

高校卒業以来、長らく東京に住んでいますが、群馬は帰ろうと思えばすぐに帰れる場所。人も温かいし、真田丸も盛り上がっていたようで良い感じですね! 実家に戻ると必ず、両親や友人と一緒に温泉に行ってのんびりします。山の緑や畑の色を見てると、「帰ってきたんだな~」と落ち着きます。

Q今年の夢は

国内外問わず旅が好き。消しゴムはんこの道具は持ち運びが簡単でどこでも彫れますから、旅モノに挑戦してみたいです。行く先々で出会った人やもの、味などをはんこにして、旅行記を書くのが夢。場所は、東京だったり、群馬だったり、色んなはんこが出来そうですね。落語も好きなので、噺家さんや小道具も彫ってみたいです。

Q群馬の皆さんメッセージを

仕事を通して群馬の人やものに出会い、緩やかに繋がっていきたいと思っていますので、名前だけでも憶えてやって下さい。群馬での仕事は徐々に増えているのですが、まだ展示をしたことがないので、いつか個展が出来るようにこれからも彫り続けます。よろしくお願いします。

文・写真/中島美江子

とみこはん

渋川市生まれ。大学卒業後、会社員を経て、2010年から消しゴム版画・イラストレーターとして活動をスタート。食べ物や人物のモチーフを中心とし、雑誌や書籍、テレビなど様々な分野で幅広く活躍中。ワークショップ講師も務め、国内外で消しゴムはんこの魅力を伝えている。とみこのはんこを略して「とみこはん」。東京在住。