甲子園の名物は[8月25日号]

夏の甲子園の名物といって思い浮かぶものは何でしょうか。カレー、焼き鳥、かち割り氷……。高校野球の聖地とはいえ、阪神甲子園球場に比較的近い関西育ちの私にとって、観戦に付きものの飲食物が身近でした。
アルプス席の応援も挙げられるでしょう。ブラスバンドや応援団を核に生徒やOB、保護者、県出身者らが一体となって声援を送ります。新たな応援曲もありますが、「サウスポー」「ルパン3世」など昔の歌謡曲やアニメソングも継がれています。
記者になって2年目に高校野球を担当し、グラウンドからの目線を初体験しました。後にプロに進んだ松井秀喜さんは当時、星稜(石川)の1年生。初の甲子園練習で「大きいなあ」とぽつり。学校の練習場より中堅は短いのだと告げると驚いていました。
壁のようにそそり立つ観客席が、そう感じさせるのかもしれません。5万人近い観客の大歓声は体に響き、飲み込まれそうになるほどです。選手がその雰囲気の中で、思わぬミスを犯してしまうのも理解できます。それだけに今夏、劇的なサヨナラ試合を巡り、ネットで選手を非難する書き込みが相次いだのは悲しいことでした。
球児は礼に始まり礼に終わり、全力を尽くします。応援団はエールを交換し、プレーに支障を与えないよう多くの規則を守って行動しています。選手たちの好プレーや競り合う試合、最後まで諦めない姿勢から、私たちは活力をもらっています。高校野球ファンの温かさが、世の多勢となりますように。(朝日新聞社前橋総局長 岡本峰子)