群馬県立女子大学新学長 小林 良江 さん

「学生と一緒に学べる公開授業や公開講座を数多く開講していますので、興味がある方は是非、お越し下さい」と笑顔で話す小林学長=県立女子大

「『地域の女子大』のブランド力や魅力を高め、県民の皆さんに必要とされる大学にしていきたい」

文学部と国際コミュニケーション学部の2学部からなる県立女子大(玉村町)。1980年度の開校以来、初となる女性学長が今月1日に誕生した。日本とアメリカの大学で国際政治やジェンダーを研究し、05年度から同大で教鞭を執る小林良江さんは、県男女共同参画推進委員会副委員長を務めるなど多方面で活躍する。来年4月、公立大学法人になる予定の同大。大学改革のかじ取りを担う新学長に、リーダーとしての思いや女子大の教育目標や意義、可能性などを聞いた。

【3つのKを心掛けたい】

Q学長就任から半月。今のお気持ちをお聞かせ下さい

「学長」と呼ばれても一瞬、濱口前学長はどちらにと見回したり、先生や事務局の方に連絡を取る時もつい「国際の小林です」と言ってしまう(苦笑)。慣れるまで、もう少し時間がかかりそうです。ただ、来春からの公立大学法人化に向けて今まさに中期計画(6年)を作成中で、やることは山積み。新米学長ですが、意識を切り替えてしっかり仕事に邁進していきたいと思っています。

Q女性初の学長として、どんなリーダーを目指したいと思っていますか

男性だから女性だからとか関係なく、学内学外問わずコミュニケーションが取りやすい環境を作っていきたい。その上で、いわゆるところの3つのKを心掛けたいと思っています。一つは細やかさ。私は典型的なO型で、かなり大ざっぱですが周囲の方たちへの気遣いを大切にしながら物事を進めていきたい。2つ目は公正公平。偏見や依怙贔屓せずフラットな視点を持ち総合的に判断したい。そして、最も重要なのが3つ目の決断力。ただし、独裁はいけません。そのためには相互理解が重要です。より良い決断ができるよう、普段から学内の風通しを良くしたい。将来的には先生方や事務局の方の率直な意見が聞けるようなランチミーティングを月1回程度、出来たら良いですね。

【自立した女性を育てる】

Q母校のハワイ大学で教鞭を執った後、県女に入られましたが、その動機を聞かせて下さい

私自身、小学校から高校まで12年間、女子校で過ごしており、もともと女子教育に凄く関心がありました。ただ、それ以上に大きかったのがアメリカにいた時、男女問わず多くの人から言われた言葉です。「日本人の女性は可哀そうね。仕事をしながら家事も全てやらなきゃいけないなんて」。 今から20年以上前です。私自身、そんな風に感じたことはありませんでしたが、確かにアメリカに比べると日本の女性の社会進出は遅れているし、性別役割分業が固定化しているなと。そこから日本のジェンダーに興味が沸き、現状を変えるには教育が重要と思い女子大を志望しました。当時、女子大の共学化が話題になった時期でしたので、周囲からは「変わっているね」とよく言われました(苦笑)。

Q県女の教育目標をお教え下さい

本学には、「教育」「研究」「社会貢献」という3つ使命があります。それらを踏まえ、主体的に考える力や柔軟な発想力を持ち、社会をよりよい方向に変えうる、国際化社会に対応しうる自立した女性を育てることが本学の一貫した教育目標です。

Q国際化社会に対応しうる人物像とは

多文化を尊重できる人だと思います。単に多文化というと外国のことをイメージする方も多いと思いますが、国際社会に限りません。国内でも地域でも、それこそ世代間でも男性と女性でも多様な価値観があります。それらを尊重できる、他者を思いやることができることが語学以上に大切。そのため、本学では多文化共生や多様性を学べる科目を両学部で複数開講していますし、ディスカッションを取り入れた授業にも力を入れています。ただし、難しく考えることはありません。友達同士、違う考えや意見を持っていると知り、理解することが多文化を尊重する第一歩です。

Q大学変革の時代、女子大の意義とは

大きく3つの利点があると思います。1つはリーダーシップが養えること。共学の場合、トップは男性が務めることが多い。でも、女子大はリーダーもフォロワーも全て女子が担わなければいけません。両方を経験することは、社会に出てから大いに役立つでしょう。2つ目は少人数教育。国公立の女子大は全国で4校ありますが、いずれも小規模校で恵まれた環境の中、充実した教育が行われています。教員と学生はもちろん、大学と保護者の方との距離も近い。3つ目は女性に特化したキャリア教育ができる点。女性のキャリアはライフイベントによる影響が大きいため、結婚出産後も働き続けたいなら、それを可能にするキャリアプランを考えなければいけません。希望に沿った指導が出来るのが強みです。

【地域に必要とされる大学に】

Q地域に開かれた大学として様々な取り組みをしていますね

「群馬学シンポジウム」や「大使リレー講座」など、県民対象の講演会や公開授業を色々行っています。地域との連携を深めることは学問の幅を広げることに繋がり、大学にとって新たな可能性をもたらします。一方、学生も各自治体とイベントを企画したり活性化プランを作成するなど様々な活動を地域で展開しています。中には英語のスピーチ大会で受賞したり、英語を共通語とする国際合宿に参加する学生も多数います。様々な人と触れ合うことで好奇心が刺激され学習意欲も高まりますから、大学だけで完結せず、地域など様々なところと関わることが重要です。

Q県女をどんな女子大にしていきたいでしょうか

少数精鋭で、自分の専門分野はもちろんですが、幅広い知識もしっかりと身に付けられる女子大を目指したい。地域の女子大には、地域社会をリードしうる人材を輩出する使命があります。女性が地域に定着しなければ人口は増えず、その街は発展しません。女性の活躍推進や地域振興が叫ばれている今、本学が果たす役割はますます大きくなっています。

Q群馬の皆さんにメッセージを

創設以来、地域と共に歩んできた本学は現在、多様な教育研究に取り組んでいます。今まで以上に「地域の女子大」のブランド力や魅力を高め、県民の皆さんに必要とされる大学にしていきたい。一般の方向けに多くの授業を公開していますので、大学の講義に興味のある人は是非、本学に一度お越し下さい。

文/写真・中島美江子

【プロフィル】Kobayashi Yoshie
55年東京生まれ。学習院大法学部卒業後、ハワイ大マノア校大学院政治学研究科で博士課程修了。同校非常勤講師を経て05年度から県立女子大国際コミュニケーション学部国際ビジネス課程助教授に。教授などを歴任し、16年度から同学部長兼大学院国際コミュニケーション研究科長。10月1日に同大初の女性学長に就任。県男女共同参画推進員会副委員長なども務める。