高崎芸術劇場特別顧問・指揮者 大友 直人 さん

高崎芸術劇場特別顧問・指揮者 大友 直人 さん
「俯瞰的視点を持って高崎独自の公演を創造していきたい」と大友さん=東京都内

「全てをポジティブに受け止め、我が子のように末永く劇場の成長を見守って頂ければうれしいですね」

先月20日、「音楽のある街・高崎」に誕生した舞台芸術の殿堂「高崎芸術劇場」(以下劇場)。その記念すべきオープニング公演に颯爽と登場、記念公演にふさわしい華やかかつダイナミックな指揮で大観衆を魅了した。劇場の特別顧問を務める大友さんに、記念公演や新しい劇場への思いなどを聞いた。

【気持ちを込めて、全力投球】

Q記念公演は、どんな思いで指揮を

新しいホールのオープニングは、やはり格別なものがありますね。劇場としての人生、歴史がスタートする、まさにお誕生日のような記念日ですから。気持ちを込めて、演者の皆さんと一緒に全力投球で演奏しました。出演者とお客さま、双方の喜び、興奮、感動が響き合い、とても熱気のある公演になったと思います。

Q記念公演では2曲を演奏しました

宮川彬良さんが劇場のために作ってくれた開館記念委嘱作品「Kerenzaki」(ケレンザキ)は耳馴染みが良く、完成度の高い曲なので非常に演奏しがいがありました。高崎をイメージした作品は、これからも様々な場面で演奏され市民の皆さんにとって特別な楽曲になっていくことでしょう。一方、第九は日本人にとってお馴染みですが、演奏するのは凄く難しい曲です。高崎第九合唱団は大変だったと思いますが短期間できっちり仕上げてくれましたし、外国勢と群馬ゆかりのソリスト4人は新鮮なカルテットを聴かせてくれました。スタンダードな名曲と新たに創造された現代曲、両方の演奏を通して劇場としての姿勢を感じてもらえたのではないでしょうか。

Q大劇場での演奏はどうでしたか

最初に音を出した時、響きが素晴らしく残響も豊かでとても安心しました。想像以上に大きなホールですが舞台と客席の距離感も良く音響、設計ともに高水準なものに仕上がっていると思います。とはいえ、大劇場を公演ごとに最適な舞台仕様にするには試行錯誤が欠かせません。演者もお客様もスタッフも、時間をかけて新しいホールに慣れていくことが大切でしょう。

【すべてはソフト次第です】

Q特別顧問に就任されました

高崎や群馬の皆さんが親しみを感じ、日常的に楽しんで頂けるような劇場になることを願っています。そのためにはお客さまは勿論、出演するアーティストにも魅力的で満足度の高い舞台を継続的に提供していかなければいけません。特別顧問という大役は優しいミッションではありませんが、俯瞰的視点を持って高崎独自の公演を劇場選任プロデューサーと共に創造していきたいですね。責任重大ですが、それ以上にやりがいを感じています。

Q企画を練っていく上で大切なことは

プロフェッショナルならではの圧倒的なクオリティと、高崎ならではのオリジナリティを併せ持つソフトをいかに生み出せるか。そこに尽きるでしょう。さらに、舞台芸術の新たな可能性を追求していく姿勢も欠かせません。それには、知恵もお金も時間もエネルギーも必要です。簡単なことではありませんが、それが出来れば全国各地から劇場にたくさんの人がやってくるでしょう。すべてはソフト次第です。

Q群馬音楽センターから劇場に本拠地を移した群響に期待することは

2013年から今年3月までの6年間、群響の音楽監督を務めさせて頂きましたが群馬における認知度は非常に高いものがあると実感しました。長年、地元に根付いた活動を地道にコツコツ紡いできた功績と実績は大きいでしょう。群響は1961年に建設された群馬音楽センターと共に歩んできましたが、これからは劇場と一心同体となって進んでいくことになります。県民の皆さんにもっと楽しんでもらうにはどうしたら良いか、もっと感動してもらうにはどうしたら良いか。新しいホールで、もう一段階新しい群響サウンドを創造していくためには従来の定期演奏会や移動音楽教室といった普及活動に加え、何か新しい機軸を開拓していくことが求められるでしょう。劇場では国内だけでなく海外の一流オーケストラの演奏を聴くことができます。世界中のオケがライバルですから、群響は井の中の蛙にならず「ワンオブゼム」という意識を常に持ちながら独自の活動を展開していかなくてはいけません。これは難しい課題ですが、大きな夢であり希望につながるでしょう。

【街のランドマークに】

Q新しい劇場の使命とは何でしょう

クラシックやポップス、オペラ、バレエ、演劇、ミュージカルなど多彩な舞台芸術を継承し発展させていくと共に、芸術文化を通して人々の暮らしや心を豊かにしていくという大きな使命があります。さらに、芸術文化振興だけでなく地域活性化拠点としての役割も強く求められるでしょう。文化都市・高崎の存在を国内外に発信していく、地域の皆さんに豊かな経験を提供していく、そんな街のランドマークのような存在になって欲しいですね。

Q新しい劇場に期待することは

これだけ大きなホールを恒常的に埋まるようにするのは、並大抵なことではありません。かなりの時間と労力がかかるでしょう。しかし、高崎はロケーションとアクセスが良く、劇場も駅と直結しています。関東甲信越など広域からお客さまに来て頂くことができるでしょう。仕事がら全国各地に行きますが、それぞれの地域性が薄まっている気がします。ですから高崎ならではの劇場、群響という特別なアクティビティがあることはとても素晴らしいこと。魅力ある独自ソフトを発信していくことで、街のイメージやブランドを作っていくという高崎市の方向性は間違っていません。劇場は、経済も含めて地域活性化促進のモデルになる可能性を大いに秘めていると思います。

Q群馬の皆さんにメッセージを

高崎芸術劇場のオープンは、地域の皆さんにとって新たな命、子どもが生まれたようなもの。市民の皆さんが実際に足を運び、色んな演目に積極的に関わっていくことで地域に深く根付いていくでしょう。最初の印象で好き嫌いを判断するのではなく、まずは全てをポジティブに受け止め、我が子のように末永く劇場の成長を見守って頂ければうれしいですね。高崎市、そして群馬県の「宝」になるよう私も力を尽くしますので、皆さんも一緒に育てていって頂けたらと願っています。

文・撮影 中島美江子

高崎芸術劇場特別顧問・指揮者
大友 直人 さん (Otomo Naoto)

1958年東京生まれ。桐朋学園大卒。小澤征爾らに師事。2013年4月~2019年3月まで、群馬交響楽団音楽監督を務める。第8回渡邊暁雄音楽基金音楽賞(2000年)、第7回齋藤秀雄メモリアル基金賞(08年)を受賞。現在、高崎芸術劇場特別顧問をはじめ、東京交響楽団名誉客演指揮者や琉球交響楽団音楽監督などを兼任