(認)清心幼稚園長 栗原 千代子さん

「子どもたちと日々、関わりながら共に学び、歩んでいきたい」と栗原園長(中央)=前橋の認定こども園清心幼稚園

子どもたちからは、面白い発想がどんどん飛び出てくるので、毎日刺激的でワクワクです」

創立1895年、県内最古の私立幼稚園で、全国でも5指に入るほどの歴史を持つ認定こども園清心幼稚園(前橋市大手町)。遊びを大事にする教育方針は広く支持され、5世代にわたって通う園児もいる。地域と共に歩んできた同園の栗原千代子園長に幼児教育のあり方や、保育への思いなどを聞いた。

毎日が刺激的でワクワク

Q教育方針を教えて下さい

保育者が「やりなさい」ではなく、子どもたちの中から湧き上がる「こうしたい」という思いを尊重しています。家庭の中では出来ないようなこと、例えば異年齢の子たちと関わったり商店街を訪れたり、初めて出会う人や環境の中で様々な体験を重ねながら生きる力を育みたいですね。文字が書けたり、間違えずに歌えたり、跳び箱が飛べるようになることを成長と捉える人もいますが、そうではなく「遊び」を通して身につく、目に見えない心の成長を大事にしています。

Q幼児教育に携わるようになったきっかけは

園長だった祖母サチや母とめ子を見て育った私は、絶対この世界に入らないと決めていました。子どもは大好きでしたが本当に大変な仕事ですから。大学時代、音楽か考古学かどっちに進もうか迷っていた時、児童福祉施設で音楽を教える機会を得ました。音楽によって子どもたちの表情が変わるのが分かるんです。その時の喜びや子どもとの関わりが今の仕事に導いてくれました。

Q子どもと接する時に心掛けていることは

自分を先生というのは違和感があって、いつも子どもには「私はね」と話しかけています。たまたま年上なのであって私の方が偉い訳ではありません。仲間として対等に関わり合い、ぶつかり合っています。「私はこう思う」と率直に伝えながら共に歩んでいきたいです。

Q幼児教育の楽しさ、大変さは

子どもたちからは面白い発想が次々飛び出てくるので、毎日が刺激的でワクワクしています。一緒に遊んでいると色んな気付きがあって学ぶことが本当に多い。一方、難しいのは保育者と保護者との教育方針の共有。スタッフ間のコミュニケーションを密にすると同時に保護者との話し合いの場も設け、丁寧に当園の教育方針をお伝えするようにしています。

子ども同士で解決できる環境作り

Qどんな子どもを育みたいですか

日本では保育者主導の園もありますが、世界的に見ると子どもの主体性や権利を尊重する対話型保育が主流です。「こうしたい」と自分の意思や好奇心に従って能動的に行動できる、でも独りよがりでなく周りと関わり話し合いながら歩んで行ける子どもを育みたい。

Q主体性を伸ばすには

当園では「遊び」の中で育っていくこと、一人ひとりが主体的に多様な他者や物と対話する環境を大切にしています。泥の山や水たまりなど、起伏に富んだ園庭は創造の宝庫。小さい頃、泥んこ遊びをいっぱいした子は友だちと川を作ったり、時に意見をぶつけ合いながら、自分の中で折り合いを付けることや相手の気持ちを考えられるようになります。何かを探求したり達成感を味わうことで、自分はこうしたいという思いを持てるようにもなりますから、当園では子どもたちの遊びになるべく制限をかけず、でも放任にならないような保育を心掛けています。

Q自由を尊重することで支障は起きませんか

メチャクチャをしていれば必ず衝突が起こります。その時、皆で解決していくにはどうすれば良いか。ああでもないこうでもないと話し合いながら、自分たちでルールを作っていければいい。保育者が介入するのではなく子ども同士で解決していける環境作りが大切。迷惑をかけなければ、基本ダメはありません。

Q地域に根差した活動を展開しています

宣教師らによって設立された当園は、創立時から地域との関わりが深く地元の詩人・萩原朔太郎や画家・南城一夫さんなど様々な人が自由に出入りしていました。サロン的な雰囲気は今も引き継がれており、一般向けの開放日や、中島佑太さんなど地元作家によるワークショップを定期的に開いています。今後も地域に根差した活動や交流を続けていきたい。

遊びが子どもの成長に

Q保育施設選びのポイントは

HPやガイドを見ても園の本質は分かりません。実際行って見て保育者と話して雰囲気を感じて欲しい。その際、各園の「遊び」をチェックして下さい。好きなこと、楽しいことに没頭できる環境が子どもの成長に繋がりますから、その時間や保育者の数と質が確保されている園は子どもにとって良いと思います。

Q良い保育者とは

表面的な活動だけでなく内面の葛藤や変化などを汲み取れるかどうか。保育者に大切なのは子どもを指導するのではなく、遊ぶ姿を観察し何が起こっているのかをきちんと評価し記録すること。心身が健康か、友だちと協力できるか、言葉で伝え合いができるか。当園では子どもと関わる中で得た情報をスタッフ間で共有し保育の現場に反映しています。

Q群馬のママパパにメッセージを

私も3人の子を育てましたが、まあ、彼らは結構問題を起こしてくれまして(笑)。学校から呼び出されたこともありましたが、あまり気にしませんでした。それぞれ個性があるので、思い通りにしようなんて土台無理な話。子育ての悩みは尽きないかもしれませんが、自分だけで抱え込まないで欲しい。どこかに必ず活路はあると信じケセラセラ、前向きな気持ちでいることが大事です。こうありたいと思えば、そういう方向に行きますから。相談する人がいなければ我々のような保育者を頼るのも手です。楽しさを見つけながら子育てして下さい。

文・中島 美江子/撮影・谷 桂

 

くりはら・ちよこ
1949年前橋生まれ。大学卒業後、東京での幼稚園勤務を経て結婚を機に群馬に戻る。男児3人出産。子育ての傍ら、清心幼稚園の保育者として働く。94年5代園長に就任。先代たちが築いた歴史と伝統を引き継ぐ。