「わたしたちはまだ林檎の中で眠ったことがない  ―第27回萩原朔太郎賞受賞者 和合亮一展」

詩と共に言葉の持つ力を感じて

100に近い数のフレーズが降り注ぐ展覧会場ⓒ木暮伸也

福島県を拠点に活動を続けている詩人・和合亮一さん(1968年~)。地元では、高校の国語の教師として教鞭をとられています。詩との出会いは、福島大学時代でした。萩原朔太郎(1886~1942)の詩に触れ、「自分の心の奥から何かが泉のように湧いてくる感じがあり、それは他の何にも代えがたかった。こんなに自分自身をかけたいと思う道があるんだ」と感じたといいます。

そして1999年、第1作目の詩集で「中原中也賞」を、2006年には、第4詩集で「晩翠賞」を受賞。その傍らで、イベントの主催や時評活動など、「若手詩人の旗頭的存在」として活躍を続けてきました。

そのような中、2011年に東日本大震災に遭い、福島の現状を詩に託してツイッター上に発表し続け、多くの人に支持され反響を呼びました。それらは『詩の礫(つぶて)』『詩ノ黙礼』という詩集にまとめられ、被災者との対談と詩で綴った『詩の邂逅』と共にその年の6月に出版されました。

その後、作曲家や演出家により楽曲や演劇などにもアレンジされ、現在も上演されています。詩集『詩の礫』が広く知られていますが、活動は多岐にわたり、自作詩の朗読のみならず、ラジオパーソナリティーや交響曲・校歌・創作神楽を手掛けるなど、幅広い表現を展開しています。

本展開催にあたり、和合さんにインタビューを行いました。その中で、「書かれた文字だけに詩は宿るものではなく、そもそもいろんなものに宿っていて、それをあえて言葉に書き写しているような感覚が自分の中にあります。詩の種子のようなものはどこにでもある。こういうものが詩だ、とみんなで分かち合うことが、詩人として社会にいる役割なのかなというふうに実感しています」と語ってくださいました。

展示会場には、100に近い数の詩のフレーズが降り注ぎ、壁一面に投影されたご自身による詩の朗読映像も上映していますが、それらは心の奥深くに迫るものがあります。詩人・和合亮一さんが、様々な出来事に表現者としてどう対峙したのか、その魅力と共に言葉の持つ力を感じて頂ければ幸いです。

現在、臨時休館中ですが、前橋市の公式You Tubeで展示風景を始め、群馬出身の女優の手島実優さんやご当地アイドルグループ「あかぎ団」の礒干彩香さんらによる記念イベントの動画を公開しています。また、文学館ホームページでは後日、和合さんが詩作品に仕上げる「みなさまの大切な人へ伝えたい言葉」を募集しています。ぜひ、ご自宅で動画を楽しんで下さい。そして、皆さまからの「伝えたい言葉」の応募をお待ちしております。

 

萩原朔太郎記念 水と緑と詩のまち 前橋文学館 学芸員
新井 ゆかりさん

群馬県立女子大学美学美術史学科卒業。ハラミュージアムアーク勤務を経て、2019年4月より前橋文学館勤務。「羽の生えた想像力-阿部智里展」などを担当

■前橋文学館(前橋市千代田町3‐12‐10)■027・235・8011■現在、休館中で5月7日頃に再開予定。会期は再開から約1カ月間※最新の開館情報はホームページに掲載■午前9時~午後5時(入館は午後4時半まで)■水曜休館(休日の場合は翌日)■入館料一般400円、高校生以下無料

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