アルゼンチンタンゴの革命的作曲家  ピアソラ生誕100年

県内各地で演奏会や映画上映、トークイベントなど

アルゼンチンタンゴに革命を起こしたといわれる作曲家であり演奏家のアストル・ピアソラは今年、生誕100年を迎える。国内外はもちろん県内でも彼の音楽を堪能できる演奏会が各地で企画されている。バンドネオンを始め、バイオリン、ピアノ、チェロ、ギター、アコーディオンなどのトップアーティストが次々にピアソラを奏でる。さらに、関連の映画上映や小説家、音楽評論家らによるトークイベントなども開催。すでに知っている人も初めての人も、「ピアソライヤー」を機に、演奏会やイベントに足を運んでみてはいかがか。高崎、玉村、太田、桐生の公演などを紹介する。(谷 桂)

アストル・ピアソラ Astor Piazzolla(1921-1992)
アルゼンチンの作曲家、バンドネオン(アルゼンチンの舞曲タンゴに欠かせない蛇腹楽器)奏者、楽団指揮者。幼少期にニューヨークに移住しバンドネオンを習得。アルゼンチン帰国後、音楽活動を開始。パリで作曲家ナディア・ブーランジェに師事。帰国し、八重奏団を結成した。前衛的な演奏を展開、タンゴの枠を超えた独自の演奏形態を産み出し新風を吹き込む。代表作に「アディオス・ノニーノ」、「ブエノスアイレスの四季」(四部作)、「リベルタンゴ」、アルバム「タンゴ・ゼロ・アワー」、バンドネオンとオーケストラのための「バンドネオン協奏曲」など。その他、オペラや交響曲、映画音楽も手がけた。

高崎芸術劇場と太田市民会館で演奏するバンドネオンの三浦一馬さん
©井村重人

生誕100周年記念にふさわしく数々の演奏会やイベントで多面的にアプローチ
【高崎芸術劇場】

高崎芸術劇場(栄町)では、今月から6月までの半年間に、合計10本のピアソラ関連公演やイベントを予定している。

世界的バンドネオン奏者、小松亮太さんの「バンドネオン・カルテット」による演奏会(1月9日=完売)を皮切りに、24日午後1時半と25日午前11時には、ピアソラ没後25年に製作されたドキュメンタリー映画「永遠のリベルタンゴ」の上映を行う。ダンスのための伴奏から、聴くためのタンゴに「革命を起こした」とされるピアソラ本人の貴重な映像が楽しめる。同劇場スタジオシアター全席1800円(今日からウェブ販売開始)。

25日午後2時からは、坂本龍一さんの録音やピアソラのライブに参加したことがあるレコーディングエンジニア、オノセイゲンさんのトークイベント「音の魔術師オノセイゲンと巡るピアソラ」。観覧無料で、現在申込み受付中だ。

26日午後1時半からは、ピアソラの魅力をポーランドに紹介した巨匠、ヤノシュ・オレイニチャクのピアノリサイタル「ショパンからピアソラへ」は、すでに完売に。

3月10日午後7時からは、若き実力派として人気を誇るバンドネオン奏者、三浦一馬さん率いる「三浦一馬キンテート(五重奏団)」によるオールピアソラプログラムが演奏される。バンドネオンやバイオリン、ピアノ、コントラバス、ギターで構成されるキンテートは、、18年10月に全編ピアソラ最新盤「Libertango」をリリース。三浦さんは、映画「永遠のリベルタンゴ」で広報大使を務めた。音楽ホール、全席指定一般4000円、25歳以下2000円。22日からウェブ販売開始。

5月15日には、小松亮太さんが「ピアソラ生誕100年~音楽で綴るタンゴ革命の軌跡」と題して再び登場。同26日には最新刊の小説「だまされ屋さん」(中央公論新社)で話題の小説家・星野智幸さんと音楽評論家・浦久俊彦さんが「ボルヘスと語るブエノスアイレス~ピアソラと文学対談~」。同31日には、ピアソラ曲を多数収録したアルバムを先月リリースしたばかりのチェリスト宮田大さんとギタリスト大萩康司さんによるデュオリサイタル、6月(日程調整中)には、オール・ピアソラのアルバムを19年にリリースしたラデク・バボラーク&オルケストリーナによる公演と続く。

担当した同劇場事業課串田千明課長は「ジャンルや国境の壁を悠然と超えた自由な世界が広がるピアソラの音楽。閉塞感が漂う今を生きる私たちの心にも、必ず響いてくるはずです」と魅力を話す。

なお、同劇場では、ピアソラに関する研究者の寄稿や年譜、語録を紹介するオリジナル小冊子「ピアソラ万華鏡」を 先月から無料配布(数量限定)。問い合わせは、同劇場チケットセンター(027・321・3900)。

 

群馬初登場ピアソラのスペシャリスト El Cielo 2020
【玉村町文化センター】

玉村町では、ピアソラの楽曲だけを専門に演奏する四重奏団「El Cielo 2020(以下、エルシエロ)」による公演が玉村町文化センター大ホールで、1月16日に開催される。

「エルシエロ」は、「超絶技巧のバイオリニスト」といわれる桜井大士さんをリーダーに、ベース(コントラバス)で群大ジャズ研出身の金森基さん、チェロの橋本專史さん、ピアノの高木梢さんで結成。昨年2月にファーストアルバム「El Cielo2020」をリリースした。「情熱的で挑発的に」をコンセプトに若い奏者らの熱を帯びた演奏が聴ける。曲目は、「リベルタンゴ」、 「ブエノスアイレスの四季~冬」、「アディオス・ノニーノ」ほか。

同町文化振興財団の大山由実子さんは「生誕年を機に、ピアソラの魂を継承する実力派の演奏を、ぜひお楽しみください。当財団主催の『バレンタインライブ』(2月7日)に出演する『おかわり団』も『アディオス・ノニーノ』を演奏予定です。また、子どもたちにもピアソラを聴かせたいと群馬ジュニアオーケストラの指導者である南美智子さんと大竹温子さんが、『リベルタンゴ』などの曲に取り組んでいて、県内でも幅広い盛り上がりが感じられます」と話す。

1月16日午後3時からの「エルシエロ」の公演は、全席指定で一般2500円、高校生以下1000円。未就学児不可。問い合わせは同センター(0270・65・0600)。

群響×三浦一馬(バンドネオン奏者) 県主催公演で協奏曲
【太田市民会館】

太田市民会館で2月11日に開かれる「群響プレミアムアフタヌーン〝和洋饗宴〟」(県と県戦略的文化芸術創造事業実行委員会主催)では、実力派バンドネオン奏者の三浦一馬さんと、松尾葉子指揮の群馬交響楽団が共演。プログラム前半では、ピアソラ晩年1979年の作品「バンドネオン協奏曲 『アコンカグア』」を演奏する。副題の「アコンカグア」とは、アンデス山脈の一座で、ピアソラの故郷・アルゼンチンとチリとの国境付近にそびえたつ南米最高峰の山のこと。演奏する三浦さんは、10歳でバンドネオンと出会い、自作CDの売上でアルゼンチンに渡航し、第33回国際ピアソラ・コンクールで準優勝した若き実力派。陽気さと哀愁が交差するメロディを奏でる。

なお、第2部では、作曲家であり俳優としても活躍する雅楽師の東儀秀樹さんが「光降る音」などを演奏する。

公演は2月11日午後3時開演。S席5000円、A席一般4000円(25歳以下は2000円)、B席同3000円(同1500円)。群響チケット専用電話(027・322・4944)。

女性デュオによる魅惑のサウンド
【桐生市市民文化会館】

桐生市市民文化会館シルクホールでは3月17日11時半からのワンコインコンサート「アバンギャルド・アコーディオン~魅惑のクロスオーバーサウンド~」の中で、女性のアコーディオンデュオ「巡~MeguRee~」がピアソラの「リベルタンゴ」を演奏する。0歳から入場できるファミリー向けコンサートで、2台のアコーディオンの音色によって魅惑あふれるクロスオーバーサウンドを楽しめる。その他、「オペラ座の怪人メドレー」や映画音楽なども演奏。同館文化振興係の丸本哲也さんは、「2020年PIF国際アコーディオンコンクール(伊)のワールド部門2位に輝いた『巡』の演奏をぜひお楽しみください」と話す。全席自由席500円もしくは5枚綴りで2000円の回数券1枚。回数券は他のワンコインコンサートでも使用できる。※前売りは回数券のみ。同館チケット専用電話(0277・22・9999)。

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