アートの可能性や役割を発信(Vol.70)

「まえばし未来アトリエ」でアートの意義について話し合う受講生たち=前橋の広瀬川美術館
「まえばし未来アトリエ」でアートの意義について話し合う受講生たち=前橋の広瀬川美術館

「街(社会)のなかでアートには何ができるのか」 先月、広瀬川美術館で開催されたアートスクールカフェ(まえばしインクルーシブ美術教育研究会主催)で参加者がこのテーマについて対話しました。この対話に先んじて、私は「社会を挑発するアート 岡本太郎の生涯と美術教育」と題して、アートが人々の日常をダイナミックなものに変えていくという太郎の手法を紹介しました。パブリックアート「太陽の鐘」の前橋市への設置予定が発表された頃で、街づくりに携わる関係者や教員、そして学生たちの間で、アートは「変革・動き・発見・異物である」といった活発な話が展開されました。

さて、昨年度を通じて群大教育学部美術教育講座茂木研究室が中心となりアーツ前橋と群大の連携事業として、「まえばしアートスクール計画」が実施されました(「平成28年度文化庁 大学を活用した文化芸術推進事業)。アートを活用して地域に貢献できる人材育成事業で、4つの講座に多くの一般市民が参加し、学生が社会のなかで美術が果たせる役割を実践的に学ぶ機会にもなりました。

この講座の一つが、広瀬川美術館を拠点とした活動「まえばし未来アトリエ」で、私は運営や講師を務めました。画家・近藤嘉男氏が戦後間もなくから子ども向け絵画教室「ラ・ボンヌ」を実践した場で、豊かな「自由」さを持つものという、美術のイメージを地域の人々に伝える発信源でもありました。そのような記憶や歴史を現代の新たな創造に繋げていくのもアートの役割の一つです。

今年度も継続して広瀬川美術館を中心とした冒頭のイベントのように、大学が持つ力で街に「アートの可能性や魅力、役割」を発信していきたいと思います。その活動にご期待ください。

 

群馬大学教育学部美術教育講座
准教授 春原 史寛 さん
【略歴】78年長野県生まれ。筑波大学大学院博士後期課程修了。大川美術館、山梨県立美術館・博物館学芸員を経て、2013年から現職。専門は日本近現代美術史(特に岡本太郎)および美術科教育研究。

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