オーロラを観る旅 オンラインで海外旅行を「疑似体験」

sowadelight.com

場所を超越する コロナ禍の新しい観光のあり方

コロナ禍により、人と人との繋がりが分断されている現在。持続可能な共生社会を目指し、イノベーションを続ける建築業ソウワ・ディライト(前橋市小屋原町、渡邉辰吾CEO)は、オンラインでカナダ・ホワイトホースと同社に隣接する私設公園「coco no mori(以下、ココノモリ)」を中継で結び、海外旅行を「疑似体験」しながら、海外との繋がりを感じてもらう初めてのイベント「オーロラ鑑賞会」を3月27日に開催した

映像や食の体験で距離縮まる

当日は、親子連れなど約100人が参加した。オーロラ観光で知られるホワイトホースとオンラインで繋ぎ、プロジェクションマッピングを使用して現地の夜空を近隣の住宅の壁に映像で投影。さらに、「オーロラ60プロジェクト」のメンバーが、実際のツアーのように自然や動植物の生態系、気候について案内した。

図書室「Tiny library」や「住箱」と呼ばれる木製トレーラーハウスカフェのあるココノモリ。参加者は、カナダユーコンのオーガニックコーヒーや焼きマシュマロ、焼き立てプレートにメイプルシロップをかけた「カナディアンブレックファースト」など食文化も体験しながら、まるで海外旅行をしているような疑似体験を楽しんだ。

夕方から始まったイベントでは、時間内にオーロラの出現はなかったが、芝生に座ってマスク越しに参加者同士が語り合ったりと、特別なひと時を楽しむ姿が多く見られた。参加者の高林亜希さん(38)諒太郎くん(8)親子は、「家族と一緒に、身近なところでこんなにオシャレで楽しい体験ができて、とてもおもしろかった。また遊びに来たい」と笑顔を見せた。

渡邉辰吾CEOは、「オンラインを活用した疑似体験はこれまでなかった試み。観光業が苦難な状況を強いられる中、コロナ禍だからこそできた取り組みを本当にやって良かった」と話した。

 

「オンライン」と「疑似体験」を融合させた全く新しい形のオーロライベントは、どのような思いから生まれたのか?

「参加して下さった方が新たな可能性や気付き、多くの発見や刺激を得てくれたら素敵ですよね」(渡邉CEO)
「一過性のものにせずアフターコロナの観光業の在り方をみんなで考えるような特別な日になることを願っています」(杉江さん)

鑑賞会に先立ち、実施前の3月18日に、発案者であるソウワ・ディライトの渡邉辰吾CEO、ホワイトホース在住の杉江好平さん、ソウワ・ディライト広報室の柴田美里室長と町田萌花さん、学生スタッフ代表の町田悠人さんの5人に、それぞれの立場から日本初となるイベントにかける思いを聞いた。

コロナ禍で自分たちが出来ることを

Q鑑賞会開催に至る経緯を教えて下さい

渡邉 5年程前、海外で杉江さんと出会って以来、親しくさせてもらっていますが、彼からホワイトホースやオーロラについて教えてもらうたびに「行ってみたいな」と思っていました。街以上に杉江さんがまた魅力的で、帰国時には必ず前橋まで会いにきてくれるのです。そんな彼が、ガイド仲間と現地で展開している「オーロラ60プロジェクト」がコロナ禍で厳しい状況に陥っていると知り、何か自分たちに出来ることはないかと考え思いついたのが今回のイベントです。

杉江 僕は、現地のガイド仲間とオーロラを通してホワイトホースの魅力を発信する「オーロラ60プロジェクト」に取り組んでいましたが、コロナ以降、活動がものすごく制限されてしまいました。頭を悩ませていた時、渡邉さんからオンラインイベントオンラインの提案をしていただき、本当にありがたかったですね。その熱い気持ちに応えられるよう、「全力で挑もう」と仲間と誓い合いました。

緊張感、臨場感、温度感たっぷり

Qイベント内容や特徴は

渡邉 当日は、当社に隣接する「ココノモリ」を会場に冬のカナダ・ホワイトホースと中継を結び、壁面にカナダの自然や観光など多様な映像を映し出しながらオーロラの生配信を行います。同時進行で現地スタッフによるオンラインツアーも実施。さらに、会場ではカナダで親しまれているコーヒーや料理などの販売、現地でお馴染みの黄色いスクールバスを展示し、まるでカナダにいるかのような空間・体験を創出します。「オンライン」と「疑似体験」を融合させた全く新しい形のイベントなので、海外との密なつながりを感じてもらえると思います。

杉江 ホワイトホースを知ってもらうために、街の一般的な概要はもちろん、現地スタッフそれぞれが得意とするオーロラや野生動物、山岳、環境など各分野を独自の視点と映像を駆使しながら紹介し、観光の楽しみ方を広く深く伝えていきます。天候などによってオーロラが見えない可能性もありますが、現地の様子をリアルタイムで発信することで緊張感、臨場感、温度感たっぷりの映像をお届けすることが出来るでしょう。そこが、通常のオンラインツアーと絶対的に違うところです。参加してくれた方には、多くの感動とドキドキを感じてもらえると思います。

世界と繋がる場所を体験して欲しい

Q会場の「ココノモリ」について教えて下さい

柴田 弊社に隣接する「ココノモリ」には、「Tiny library」と呼ばれる木造の図書室や木製トレーラーハウス「住箱」が設置されています。「訪れた人同士が世界とつながり、互いに触発される場所」という理念とビジョンから生まれた私設公園で、今回の鑑賞会でも参加者の皆さんにそのコンセプトを体感してもらいたいと思っています。
今回、渡邉CEOと杉江さんの繋がりから生まれたイベントの取りまとめ役を任されましたが、「コロナ禍だから海外に行けない」「人に会えない」というマイナス面に捉われず、このような状況だからこそ新しい旅の形や楽しみ方、人との繋がり方が発見できる機会にしたいですね。

杉江 コロナ前、日本に帰るたびに前橋を訪れ渡邉さんと会っていました。その際、まだ「ココノモリ」が出来る前の土地を何度も案内してもらい、「人と人が繋がる場所にしたい」という渡邉さんの思いを切々と聞いていたので、それがきちんと形になったことに感動しています。

今まで見たことのない風景を創り上げていく

Q企画運営にはソウワ・ディライトのスタッフだけでなく、大学生や地域住民など様々な方が携わっていますね

町田萌花 今回のイベントでは、学生などを巻き込みながら地域の価値を見直したり、盛り上げていくのが入社1年目の私に課せられた役割かなと感じています。というのは私自身、学生時代に地域のイベント企画に参加し貴重な機会を得たので、後輩たちにも「色んな世代や立場の方と知り合うことで、新しい世界に触れて欲しい」と積極的に声をかけました。コロナ以降、不自由な生活を強いられている学生と一緒に、今まで見たことのない風景を創り上げていくのは私にとっても本当に素敵な経験になるでしょう。準備を進める上で大変なこともありましたが、このような壮大な夢のあるプロジェクトに関われて本当に嬉しいし、すごくやりがいを感じています。

町田悠人 姉からイベントに誘われた時、純粋に「面白そうだな、前橋でオーロラが観られたらすごいな」と感じました。コロナ禍で卒業旅行に行けない学生を、鑑賞会に無料招待するという主催者側の粋な計らいにもすごく共感しましたね。鑑賞会を通して旅気分を味わいたいと、同級生たちを誘って運営側として参加することになりましたが、当日はリアルな旅とは違う疑似体験を楽しんでもらえるよう、「おもてなし」の心を持って来場者をお迎えしたいですね。

渡邉 実は今回、学生さんたちだけでなく近隣に住む方も協力的かつ好意的に関わって下さっています。オーロラの映像を映し出す場所は、何と「ココノモリ」の隣にある住宅の壁面(笑)。開催に向け、近所の方と積極的にコミュニケーションを取りながら準備を進めてきましたが、地域との繋がりを深める今回の企画がどんな可能性をもたらすのか、ある種、社会実験的な意味合いもあるのかなと考えています。

現地にいる「人」に興味関心を持ってもらえたら

Q イベントを通して伝えたいメッセージは

杉江 国境を越え、様々な人が出会えるオンラインイベントに大きな可能性を感じています。前橋の会場にいる人たちが、海外の状況を知って観光旅行の楽しさを再認識し、場所以上に現地にいる「人」に興味関心を持ってもらえたら良いですよね。日本でも初めての試みだと思うので、一過性のものにせずアフターコロナの観光業の在り方をみんなで考えるような特別な日になることを願っています。

渡邉 観光というと話題の都市やメジャースポットを目指す人が多いと思いますが、私は完全に「人」ありきだと思っています。今回も人と人との繋がりから、唯一無二の企画が生まれました。私たちは場所を超越した「人との繋がり」に大きな意味を見出しています。関わる人たちが一緒に創り上げていく過程が大切で、そんなことをこのイベントを通して伝えられたら良いし、参加して下さった方が新たな可能性や気付き、多くの発見や刺激を得てくれたら素敵ですよね。
(聞き手:中島美江子)

ZOOMインタビュー参加者
渡邉辰吾CEO、柴田美里さん、町田萌花さん、杉江好平さん、町田悠人さん、
谷桂(朝日ぐんま)、中島美江子(同)
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