卵とじ[2月24日号]

長男が熱を出すといつも食べたがる料理「卵とじ」。野菜や肉を甘辛く煮て、最後に溶き卵を流し込む。ズボラでおっちょこちょいな私でも簡単にできるし、「牛肉とゴボウ」「しらすと白菜」など好きな具材を組み合わせて色々なバリエーションが楽しめるのも良い。だが、息子は「豚肉」「ジャガイモ」「玉ネギ」入りのことを「卵とじ」と呼ぶ。
風邪で幼稚園を休んだ時、「消化が良くて温かく、栄養のあるものを」と、たまたま台所にあったものでパパっと作り、ご飯の上にのせて出したのが最初。母にとっては「適当丼」だったが、息子の中ではどうやら特別メニューとして記憶されたようだ。
今週、期末テスト直前という大事な時期に遂に息子が流行りのインフルエンザにかかってしまった。40度の熱と格闘する中、「卵とじが食べたい」と布団の中でつぶやいた。
早速、半月切りのイモと玉ネギとニンジンをフライパンでゆでた。しょうゆ、酒、砂糖で味をつけ、卵を溶いて蒸らして出来上がり。大人になった時、この子にとってのおふくろの味はきっとこれなんだろうな…。
「はいよ」 差し出したどんぶりを手に、「いただきます」 空ろな目でゆっくりと口に運ぶ息子。高熱にもかかわらず、あっという間にたいらげた。「おいしかったよ」とニッコリ。少し元気が出たようだ。あれ、でも何か足りない気がするぞ…。あ、豚肉入れるの忘れた。

(上原道子)

掲載内容のコピーはできません。