命をつなぐ[9月15日号]

力はしているつもりだが、24時間体制で娘の面倒を見ている妻には頭が上がらない。

お互いの両親にとって初孫で、目尻は下がりっ放し。「目に入れても痛くない」というのはこういうことかというくらい溺愛してもらっている。妻の祖父母はすでに他界してしまったが、私の母方の祖母は健在。娘にとっては唯一の曾祖母だ。

先日、車いすのため施設に入っている祖母のところへ娘を連れて行った。耳は遠いが足以外は健康。「かわいい子が出てきたねえ、重いねえ」と娘を膝の上に乗せながら笑顔であやしてくれた。大正生まれの祖母と娘との年の差は93歳。先の戦争を生き抜いてきた世代。亡くなった私の祖父たちはいずれも徴兵され戦地に赴いた。祖父母がいなければ両親もおらず、私自身もいない。ましてやこの子も。これまで連綿と受け継がれてきた命を、この子にまたつないだのだと感じると身が引き締まる思いがする。

来週は秋のお彼岸。命をつないでくれた祖父母のもとへ娘を連れて墓参りをし、出産報告と感謝を伝えたい。純真無垢な笑顔を見せる娘が過ごすこれからの社会が、より良くなるよう願いも込めて。

(林哲也)

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