声をかける [目の不自由な人がホームから転落する事故が後を絶ちません…]

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目の不自由な人がホームから転落する事故が後を絶ちません。11月末にも東京の地下鉄の駅で、足を踏み外した男性がはねられて亡くなる痛ましい事故が起きたばかりです。

紙面には視覚障害のある方々の「コロナ禍で周囲の声かけや誘導がガクッと減った」と窮状を訴える声が。日本視覚障害者団体連合会も、ホームドアの設置推進とともに「3密回避やソーシャルディスタンスの確保により、駅員や乗客からの声かけや見守りが行いづらい状況が生まれている」と報告しています。こんなところにもコロナ禍の影――。いたたまれない思いです。

電車内で以前、白い杖をついて乗車してきた人に「席が空いていますよ」と声をかけ、誘導したことがあります。ただ、親切心のつもりが大失敗。「ドアはあちら」と方向を示しただけで先に下車してしまったのです。

別の機会に取材した視覚障害者に打ち明けると、「慣れた路線では決まった車両のドア近くに立ち、何歩で下車できるか計算している。普段と違う座席に取り残されると混乱してしまう」と指摘されました。あの時、どうして「下車駅までご一緒します」と言えなかったのだろう。

意を決して困っている人に声をかけても、行き違いでお互いに戸惑う場面があるかもしれません。それでも、感染防止で人との距離が離れがちだからこそ、声を上げる勇気と行動力を持ちたい。師走の空の下、そんなことを考えています。

(朝日新聞社前橋総局長 本田 直人)

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