学校の美術教育にアートの多様性を繋げる試み(Vol.81)

桃川小学校の図工授業で子どもたちにアドバイスするアーティストの中島佑太さん(左)=2017年10月場
桃川小学校の図工授業で子どもたちにアドバイスするアーティストの中島佑太さん(左)=2017年10月場

小学校や中学校にアーティストがやってくる! 「アーティストインスクール」と呼ばれる試みが日本でも近年、行われ始めています。県内でも、アーツ前橋が昨年度から試行し、今年度も前橋市内の3校の小中学校で実施されています。私が所属する特定非営利活動法人まえばしプロジェクトではアーツ前橋と連携して、その事業の中で学校とアーティストをつなげるニーズの把握と日程、内容調整などのコーディネートを行っています。

私が担当する桃川小学校では昨年10月から現在まで、子どもの本来の想像力や表現力に注目したワークショップ実践を続けている県出身・在住アーティスト中島佑太さんが図工の授業に継続的に参加しています。絵画や工作の単元で、先生がクラス全体の授業を進めていく中で、アイディアに困ったり、思ったように表現できなかったりする子どもたちにヒントやアドバイスを伝え、道具の使い方を具体的に見せていきます。

アーティストを職業とした専門的な思考・知識・技術を持つ大人の、「やりたいことをやること」、「誰かと一緒に表現すること」、「人と自分の違いを認めること」、「わからないことや失敗を面白がれる態度」は本来、すべての人の生活の充実にとって大切なことです。学校教育という重要かつ独自のルール下と限られた授業時間数では取り入れにくい要素ですが、アーティストが学校内に多様性を持ち込み刺激します。この過程で子どもたちが活性化され、先生や私自身の、学校・子どもたちの可能性についての見方が変わったように思います。

多くの学校で導入して欲しいこの事業の意義と取り入れやすい方法について今、学校・アーティスト・美術館と共に考えています。県内での取り組みは始まったばかり。より多くの人に知ってもらえるように、今後、成果と効果を様々な機会に積極的にお知らせしたいと思います。興味を持った方は是非、ご注目下さい。

 

まえばしプロジェクト監事
群馬大学教育学部美術教育講座
准教授 春原 史寛 さん
【略歴】78年長野県生まれ。筑波大学大学院博士後期課程修了。大川美術館、山梨県立美術館・博物館学芸員を経て、2013年から現職。専門は日本近現代美術史(特に岡本太郎)および美術科教育研究。

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