当然のこと[6月21日号]

先日、約3年かけて伸ばした髪を切り、ヘアドネーションのために寄付した。へアドネーションとは、寄付された髪で医療用カツラを作り、病気などで髪を失った子どもに無償提供する活動をいう。数年前に放送されたテレビの特集番組を見て、困っている人の役に立てるならば、「当然のこと」として協力したいと思い、髪を伸ばし始めた。

それからしばらくした頃、県内でも太田のぐんま国際アカデミーの女子生徒が同好会を立ち上げ、同活動に取り組んでいると知り取材した。2017年と翌18年の2回、弊紙で記事を掲載したところ、読者からの反響は予想以上に大きかった。私自身も引き続き応援したい想いを込めて、今回切った自分の髪に手紙を添えて彼女たちに送った。

一方で考えさせられたこともある。取材の過程で、カツラ1つを作るのに20~30人分もの髪が必要と知った。髪の質は人それぞれ異なる。寄付によって集まった髪には、数段階の化学処理を施し、髪質や色などを揃えた上で、弱い髪、折れた髪などを取り除くという。役立つ髪はほんの少ししか残らない。これほど込み入った工程を経なければ、病などに苦しむ子どもを助けられないのだろうか。

人それぞれ異なるのは「当然のこと」。健康でなくても、周りと同じなくても、誰もがあるがままに生きられるよう、世の中の「視線」や「仕組み」が変わることもまた、強く求められていると思う。

(野崎律子)

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