映画監督 清水 崇さん

ある意味、プライベートこそホラー(笑)

前橋もロケ地となったホラー映画「こどもつかい」(松竹、明日17日から全国公開)やオムニバス映画「ブルーハーツが聴こえる/少年の詩」(日活、全国公開中=ユナイテッドシネマ前橋で24日から上映)など次々と話題作を手掛ける前橋出身の映画監督・清水崇さん(44)。両作品は奇しくも子どもや親子がテーマになっています。ホラーの旗手であり、3児のパパである清水監督に両作の見どころや自身の子ども時代、育児への思いを聞きました。

子どもを意識的に描く

Q「こどもー」「ブルーハーツー」いずれも子どもが登場します

「呪怨」で子どものお化けや「戦慄迷宮」で台本に書かれていなかった子ども5人を出すなど、以前から子どもが登場する作品は多く、スタッフからも「また子どもですか!」と言われる程。最近やっと、自分は子どもを題材にした作品を作りたいのだと気付きました。以来、意識的に子どもを描くようになりましたね。

Q「こどもつかい」について教えてください

連続不審死事件を巡るホラー映画で、子どもを題材に底知れない「怖さ」を掘り下げました。着想は童話「ハーメルンの笛吹男」。子どもの怨念を操る謎の男を滝沢秀明さんが演じています。当初、どんなキャラクターにしたらいいか悩んだが、イメージが固まるにつれ「これはどうやら俺自身であり、自分を投影しているんだな」と気付きました。小憎たらしくて下ネタ好きで自虐的で悪態をつく。大人になりきれないキャラにしたいと滝沢さんに伝えると腑に落ちたようで、「こどもつかい」を魅力的に演じてくれました。

Q児童虐待など重いテーマも扱っていますね

ホラーだからこそ、現実の日常生活にある目を背けてはいけないリアリティをベースに捉えました。娯楽ですが、そこを無視してはいけない。大人は誰も子ども時代を経験しているのに、その目線に戻れない。子どもと大人の距離感や認識のズレがもたらす「闇」の部分に触れないと、底知れぬ怖さは出せないと児童虐待なども敢えて取り入れました。

Q「ブルーハーツ―」についてはいかがですか

ホラーでは無いし、「こども―」とはまた別の形で表現していますが、モチーフにしたザ・ブルーハーツの「少年の詩」にある歌詞「♪大人たちに褒められるような馬鹿にはなりたくない」って精神は両作共に共通してますね。
本作は87年の前橋が舞台。母子家庭の、思春期の少年のある一日の出来事です。前橋駅北口のエキータや母校などで撮影しましたが現在、市がロケ地マップを製作して下さっています。

子どもの頃の原体験を作品に

Q監督自身、どんなお子さんでしたか

落ち着きがなく走り回っている子でした。習字を習っても友だちや弟の顔に墨を塗ったり、近所の子に「お墓を1周してきて」と肝試しさせたり。ガキ大将でしたが神経質で、1人の時は本を読んだり自分の世界に没頭するのが好きでした。「呪怨」の「あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛…」という幽霊の声や、「少年の詩」の少年が机上の物、それらを蹴散らす仕草など全て自分がやっていたこと。子どもの頃の原体験が発想の元になっています。

Qお子さんについて教えて下さい

小5年、3年、年長、男男女の3人です。子どもが生まれてから生活が一変しました。自宅で映画1本じっくり観られない。「いつ終わるの?映画見ているだけじゃん」と子どもたちに責められる。「これも仕事だ」と言いたい(苦笑)。勉強を教えたり公園に行ったり一緒にお風呂に入ったり、仕事以外の時間はなるべく子どもと過していたいです。

Q子育てで気を付けているところは

感情的にならないようにしています。妻も自分も「我が子はどうしてできないのか、何で分からないのか」と怒っている時は、自分の嫌な部分を子どもに見つけたからではないでしょうか。「母親の顔をして叱っているけど、俺から見たらあなたにそっくりだよ」と思うし、自分も「5歳児だった自分と一緒だ。むしろ、もっと酷かったな…我が子のことさえ冷静に見られないんだ」と反省したり。時には、「大人は頭ごなしに怒鳴るだけ!」と突き上げられることも(苦笑)。「確かに大人のエゴだな」と言い過ぎた時は謝ります。でないと信頼関係が築けません。ある意味、プライベートこそホラーですよ(笑)。

Q子育ての楽しいところは

子どもと一緒にいると、自分も発想力が豊かになる。これは聞いた話ですが「お月様とって」と子どもに言われ、バケツに水を張って「ここにあるよ」と水面の月を手探りしてみせる。大人同士だったら絶対生まれない不思議で素敵なやり取り。あと、もし夫婦がどんよりしているときでも、幼い子どもは「あのさあ」と空気も読めず、全く違う話を満面の笑顔で始めたりする。その無邪気さについ笑ってしまい、一瞬で家族全員が救われることも。時に極端で脈絡のない子どもの言動は、仕事のアイデアにつながることも多いですね。

Q子育てや家事の役割分担は

特に決めていませんが、妻が大変そうな時は、「何か手伝おうか」と言うようにしています。専業主婦だからか、家事や育児を抱え込んでいても彼女から「手伝って」と言うことはない。職業がら平日も家にいることがあるので言ってくれればやるのになと思う時もありますが、率先してお皿を洗っても「パパがやっても結局やり直さないといけない」と子ども伝手に知らされることもしばしば(苦笑)。

子どもも大人も楽しめる絵本を書きたい

Q群馬のパパママに伝えたいことは

子どもと接する時、心身ともに同じ目線になれると良いですよね。それが難しいのですが。だからこそ、空気を読むとか感情的になるとかも大切だし、恥ずかしがらず、偉ぶらずにダメな時は謝って、言葉より抱きしめ合う。そうすると、逆に関係を冷静に見られると思います。何て偉そうなこと言うと、自分にまた帰ってきちゃいますけどね(笑)。

Qこれからしたいことは何ですか

これからというか、昔からの映画以外の夢は絵本を描く事。これからも、子どもと大人の関係を追いかけたいと思っています。将来的には子どもも大人も楽しめる絵本を出せたらいいですね。

文・谷 桂 撮影・中島 美江子

しみず・たかし
72年前橋生まれ。中央高校卒。近畿大で演劇・芸能を専攻。「呪怨」シリーズがヒットし、04年に全米公開されたリメイク版でハリウッドデビュー。日本人監督で初の全米興行成績1位を果たす。実写版「魔女の宅急便」(14年)などファンタジーやコメディ映画も手掛ける。「ブルーハーツが聴こえる/少年の詩」、エグゼクティブ・プロデューサーを務める「バイオハザード:ヴェンデッタ」が全国上映中。新作「こどもつかい」は明日17日から全国公開。シャイカー所属。東京在住

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