糸で彩る ぐんまデザイン

メーカーの独自技術で新商品開発

コロナ禍が長引く中、独自の技術で生き残りを図る企業がある。糸を使ってアクセサリーやオブジェ、編み込みグッズなどの新商品を立ち上げている県内老舗の刺繍工房やアパレルメーカーの商品を紹介する。(谷桂、上原道子

綿ニットの端材で作ったホームインテリア

染色工場がショップ、リニューアル
桐生 mimimo shop(ミミモショップ)

円形のラグや小物入れなど、かぎ針で手編みしたカラフルな商品が店内を彩る桐生市の「mimimo shop(ミミモショップ)」が、19日にリニューアルオープンした。

mimimoで編んだ製品

今年創業108年、布の染色や特殊加工を手掛ける土田産業に併設する店舗の2階。染色工程で出る端材を再利用したオリジナルの極太編み糸「mimimo(ミミモ)」を使ってインテリア用品を制作し販売する。素材は綿100%で、もとはTシャツ用の厚みがある生地のため吸水性や肌触りもよく、洗濯機でも簡単に洗え縮みにくいことからファンも多い。また、有害物質を一切含まない材料で染めているため環境にもやさしいという。

同社ではそれまで、丸編みニット生地(筒状に編んだ布)の染色作業で、丸まってしまう端の部分を裁断し廃棄していた。しかし、SDGs(持続可能な開発目標)の取組みの一環として「耳(ミミ)も」資源にしようと2016年に商品化。その後、敷地内に編み物体験のできるカフェを立ち上げたほか、県内外でもワークショップを開催してきた。しかし、ミミモ製品の人気が高まり始めた矢先にコロナが流行。このたび、ホームインテリアとしての販売強化へと方向転換することになった。

リニューアルしたショップ内で、生地の端材を再利用した極太糸「mimimo」をPRする土田善一社長

同社の土田善一社長は「自分で作るもよし、製品を買うもよし。コロナで暗くなりがちな家の中を明るく楽しくするインテリアの一つとして提案していきたい」と意気込んでいる。店舗のデザインやディレクションは、同社と交流のある太田のアパレルメーカー「マウンテンディアー」の山鹿直子さんが担う。山鹿さんは「手芸好きの人だけでなく、インテリアに興味のある人などターゲット層を広げていけたら」と話す。店内には、土田産業の職人が染めたTシャツやストール、バッグのほか、ミミモ製品とともに楽しめる食器や食材なども並ぶ。

■mimimo shop
桐生市新宿2-2-21 TEL.0277-43-8720
営業時間:平日正午~午後5時半、土曜は午前11時~午後6時
定休日:日・月曜
インスタグラム:@mimimo_shop_

糸のアクセサリー工房「笠盛」の技術

軽やかな肌に優しいシルクマスクコード発売
桐生 トリプル・オゥ

シルクマスクとセットで使うとファッション性が高まる

織物の街、桐生市にある創業140年以上の刺繍メーカー「笠盛」(櫻井理代表取締役社長)は、2010年に誕生した同社の刺繍アクセサリーのブランド「トリプル・オゥ」において、「シルクマスクコード」を3月に発売した。

国内外のデザイナーと共に「良いモノづくり」を目指し、アパレル専門店や百貨店へ刺繍ネックレスやイヤリングなどを納品していた同社。外出自粛が叫ばれたコロナ禍で、アクセサリーだけでなく、生活に欠かすことができないマスク「シルクマスク」を昨年から販売したところ、「オシャレで機能的」と評判を呼び、3月からはセットで使える「シルクマスクコード」も扱っている。

マスクコードとは、マスクを外した時に、首から垂らしておけるアイテム。同社はコードの素材に金属を一切使わず、すべてシルクを使用した。金属アレルギーの人も安心なコードは、1本約3g。留め具の付け方によっては、ネックレスにも早変わりし2WAYに使える商品として人気がある。

一本の糸から生み出される多彩なネックレス

同社のノコギリ屋根の刺繍工場に併設され、昨年9月にできたファクトリーショップでは、金や銀、ラベンダーにターコイズなどカラフルな刺繍ネックレスやピアスなど、ブランド全商品を直接見て購入することができる。担当の新井大樹さんは、「一本の糸から作り出されるアクセサリーは、優しい付け心地です。群馬の人にももっと知ってほしいですね」と話す。「シルクマスクコード」は、ラベンダー、グレー、ベージュの全3色。価格は税込4400円。

■トリプル・オゥ
桐生市三吉町1-3-3 TEL. 0277-44-3358
営業日:6月5、18、19日/7月3、16、17日 /8月7、20、21日
営業時間:午前10時~午後6時  ※開店日以外は事前予約制で対応

オンラインショップ: https://www.000-triple.com/
インスタグラム:@tripleo_official

絵画のように飾っても、貼り付けてもOK

刺繍ステッカーフレームワッペン
前橋 ヤマグチ刺繍

現在は12種類あるヤマグチ刺繍のステッカーフレームワッペン

前橋市にある刺繍を基軸とした総合加工を手掛ける「ヤマグチ刺繍」(山久地忠士代表取締役)。先月から、絵画のように飾れる「刺繍ステッカーフレームワッペン」を製造発売している。

「身に着ける刺繍とは違う路線で、とにかく新しいものを作りたかった」と話すのは、発案者で最高技術責任者の瀬下直樹さん。絵のような中央部分には、キャンバスのような風合いの生地に、フルカラーでプリントしたイラストや写真を入れ、周囲のフレーム部分については、2色の刺繍糸に加え、ウレタンを中に入れて立体感を出している。デザインをした小平将生さんによると「刺繍に加え、生地に染色を施す昇華加工の技術を生かし、部屋に飾っても、貼っても楽しめるワッペンを作りました。お持ちの写真やイラストで、オンリーワンのステッカーもできます(別途価格)」と話す。

フレームワッペンと刺繍をした帽子を持つ瀬下さん

同社はこれまで、主に大手スポーツ用品店や学校から受注し、スポーツウェアやTシャツ、帽子などの刺繍を手掛けてきた。瀬下さんは「コロナによって部活や大会が減り、当社も大きな影響があった。独自商品を生み出して、新たな道を探りたい。ステッカーをきっかけに当社を知ってもらえればうれしいですね」と意気込む。絵柄は12種類、サイズはS、M、Lの3種類。価格は、S(高さ40㍉×幅30mm、税込700円)、M(高さ60㍉×幅45mm、同950円)、L(高さ80㍉×幅60mm、同1350円)の3種類。受注商品。店頭販売や電話予約もできる。

■ヤマグチ刺繍
前橋市西片貝町4-23-3 TEL. 027-223-7089
営業時間:土日祝や特定日を除く、午前9時から午後6時
HP:https://www.name-mark.jp/ インスタグラム:@yamaguchishisyu

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