縄文群馬もすごい[10月19日号]

 アーツ前橋で開催中の「岡本太郎と『今日の芸術』」展(1月14日まで。今月中は開館5周年記念で無料)を訪れると、芸術家岡本太郎のエネルギーと思想に圧倒されます。同館近くの広瀬川沿いに「太陽の鐘」が今春設置されたことで深まる、天才芸術家との縁に感動を覚えます。

 「芸術は爆発だ」の名言で知られる氏は、縄文の造形美を見いだし世に叫び、血肉にしたことで知られます。今夏、東京国立博物館で催された特別展「縄文」は30万人以上を集めました。閉幕間際に駆け込んだ私も、氏の功績で日本美術史に記された「縄文の美」に魅了されました。

 日本列島で1万年にわたって続いた縄文文化は、世界最古級の土器群を生みました。同時代の世界を見渡しても稀有な、ユニークで美しい装飾や曲線は、縄文人の暮らしや祈り、宇宙観を想起させます。「土偶女子」「縄文にハマる人々」といった言葉や映画の流行に納得です。

 人波にもまれた特別展では、渋川市の遺跡から出土した「深鉢形土器」「焼町土器」、東吾妻町の「ハート形土偶」、板倉町の土偶、榛東村の土製耳飾りにも出会いました。焼町土器は、今月17日からパリで始まった縄文展にも出品されています。

 県内には、桐生市の「みみずく形土偶」などもあり、土偶女子の熱い視線を集めます。榛東村の耳飾りは、577点という大量出土に驚きます。2年前に長野原町で確認された8300年前の人骨は、貝殻製の装飾品を着けていました。まだまだ深い群馬の歴史文化に、学びは尽きません。

(朝日新聞社前橋総局長 岡本峰子)

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