群馬県高等学校野球連盟会長 髙田 勉 さん

「高校時代のOBで作った軟式野球チームに入っています。全然体が動きませんが(笑)。それでも野球は楽しいですね」と笑顔で語る髙田会長=前橋工業高校長室

「野球での経験を生かして、今後の人生をより豊かにしてほしい」

100回の歴史的な節目を迎える全国高校野球選手権記念大会。今月7日から群馬大会が開幕し、球児たちが連日熱戦を繰り広げている。昨年から県高等学校野球連盟(県高野連)会長に就任、大会運営などの責任者として高校野球をサポートしている。自身も高校球児として投手などで活躍、また、監督として指導に携わった経験を持つ。現在の群馬の高校野球のレベルや魅力、100回大会や球児への思いなどを聞いた。

【100回大会ならではの取り組み】

Q今年で夏の大会が100回目を迎えました。群馬における歴史的な試合を教えてください

1978年、春の選抜大会ですが、前橋の松本稔投手が史上初の完全試合を達成したのはすごかった。傑出した出来事としては、やはり99年の桐生第一、2013年の前橋育英の夏全国制覇。そのほかにも、桐生の選抜準優勝や前橋工の2年連続選手権ベスト4など挙げればきりがないですね(笑)。

Q記念すべき100回県大会での取り組みを教えてください

7日の開会式では東農大二のマーチングバンドが出演し、会場を大いに沸かせてくれました。開会式では新調された優勝旗を披露し、15日には上毛新聞敷島球場で、全国56の地方大会をボールでつなぐ始球式リレーを実施するなど、100回大会ならではの取り組みを行います。

【高校野球は学校教育の一つ】

Q県高野連の役割を教えてください

高校野球の健全な発達を図ることを目的にしている組織です。高校野球は部活動の一つであり、学校教育の一つ。生徒たちの健全育成に繋げるというのが第一の目標です。

Q具体的な仕事内容は

春、夏、秋の各県大会の運営が主な仕事です。そのほか、中学生と高校生を対象にした野球の技術講習会や高校野球部員向けの審判講習会、マネジャーを集めたアナウンス講習会など様々な活動を行っています。

Q各学校とはどのような連携を図っていますか

日本高野連から通達されたルールの改変や不祥事に対する注意喚起など各学校の代表者に会議を通して伝えています。何か問題が起きた時は、「ほう・れん・そう」が大事だと思っています。報告、連絡、相談を受け、今後の対応をアドバイスしています。

Q大会運営で心掛けていることは

どのチームが甲子園に行っても戸惑わないように、攻守の切り替えなど選手たちに甲子園並みの徹底した指導を心掛けています。それが群馬の高校野球のレベルアップにも一役買っていると思います。春、秋はベスト8以上、夏は全試合入場料を取りますが、それはお金を払って見てもらうだけの質の高い環境を作っている自負があります。試合内容はもちろん、高校生が行う場内放送も素晴らしい。イントネーションや攻守の交代の伝え方など、充実したアナウンスで試合を盛り上げてくれています。グラウンド整備やボール拾いなどを行う生徒たちも大会を支えてくれています。

【全国的にもレベルが高い】

Q全国的に見て群馬の高校野球のレベルは

過去5年の春と夏の甲子園の勝敗を見たところ、勝率が7割近くで全国的に見てもレベルが高い。今年の春選抜は出場できませんでしたが、毎年のように選ばれているし、昨年は2校出場も果たしました。

Qレベルが高い要因は

ほとんどの学校の指導者が高校野球経験者です。大学など県外に出ていても、教員として、指導者として群馬に戻ってくるいい流れが出来ています。部活動のあるべき姿。どの学校も指導が行き届き、全体のレベルが底上げされています。他県のチームと試合をすると、1回戦で負けてしまうチームでも「ベスト8くらいですか?」と聞かれるといいます。それだけレベルが高いです。

【今も昔も変わらぬ直向きなプレー】

Q今大会の見どころを教えてください

今春関東大会で優勝した健大高崎の破壊力がどういう結果になるのかが楽しみ。唯一の課題は投手力でしょうか。2季連続準優勝の関学大附や、前橋育英、桐生第一と私立が優勢なのは事実ですが、今春ベスト4に躍進した市立太田、健大高崎と打撃戦を演じた前橋商、昨秋前橋育英を破った藤岡中央など公立勢の奮起にも期待しています。

Q高校野球の魅力とは

今も昔も変わらず選手たちの直向きなプレーが人を惹きつけるのだと思います。様々なスポーツがあり、野球が一人勝ちする時代ではありませんが、お互いのスポーツが切磋琢磨して質を高め、将来発展してけたらと感じています。

Q野球人口が低下していると言われています

少子化で子どもの人数自体も減っていますが、私が子どもだったころと違い、遊びで野球をする機会が少なくなってきています。日本高野連が次の100年を見据えた「高校野球200年構想」の事業を始めています。県高野連としても、小中学校の指導者と情報交換をしたり、小学生の、ボールをバッティングティーに置いて打つティーボールの情報を提供したり、育成に力を入れるなどしています。子どもたちが実際にボールを打つ楽しさを体感して、野球を始めるきっかけになってほしいですね。

Q100回大会を迎え、高校野球のどんなところに注目して欲しいでしょうか

節目の大会に出場できる選手たちは運がいいですが、騒いでいるのは大人たちだけ(笑)。私は高校3年の夏の大会前にケガをしてしまい、最後の夏は満足いく試合ができず悔しい思いをしました。選手たちは、いいコンディションで試合に臨んでもらいたい。既に大会は始まっていますが、球場に足を運んで群馬のレベルの高い試合を見てください。

Q高校野球ファンにメッセージを、球児にエールをお願いします

野球は、やるのも見るのも素晴らしいスポーツ。群馬のたくさんのファンが野球を支えてくれています。ぜひ温かい気持ちで見守ってください。選手たちには、グラウンドでの勝者はもとより、高校生としての勝者になってほしい。野球での経験を生かして、今後の人生をより豊かにしてもらえたらうれしいですね。

文・撮影 林哲也

【プロフィル】Takada Tsutomu
58年高崎(旧新町)生まれ。高崎高、筑波大卒業後、県内の高校の体育教諭に。高崎高では、1年からレギュラーとして活躍。74年、第56回全国高校野球選手権北関東大会で準優勝。あと一歩甲子園に届かなかった。渋川西高、高崎北高、中央高で野球部監督を務め、県教委や安中総合学園高校長などを経て、17年から前橋工業高校長と高野連会長に就任。高崎在住。

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