資生堂トップヘア&メーキャップアーティスト 原田 忠 さん

「僕自身ワクワクすること、周りをドキドキさせることを、これからも追及していきたい」と熱く語る原田忠さん=前橋の県美容専門学校

「一人ひとりに寄り添い、オリジナルの美を創り上げるのが僕らの使命」

布袋寅泰氏ら著名アーティストのヘアメイクを手掛ける一方、人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」をモチーフにした作品で美容界に革命を巻き起こしたヘア&メーキャップアーティスト。今春、資生堂が運営するヘア&メーキャップスクール「SABFA(サブファ)」の第7代校長に就任後、郷里で初のヘアショーを成功させた原田さんに仕事への思いや美容表現の可能性について聞いた。

【故郷からビューティー発信】

Q郷里での初のショーはいかがでしたか

予想以上に多くの方がご来場してくださって驚いています。客席に知り合いがいて、恥ずかしいやら嬉しいやら。やはり故郷は温かいですね。「ただいま」という気持ちでいっぱいです。

Qショーで感じたことは

地元で頑張っている美容師さんたちとショーを作り上げましたが皆、美へのこだわりが高くプロフェッショナル。自分の故郷を田舎だと思い込んでいましたが、ここからでも十分ビューティーは発信できるという手応えを感じました。

【ここが自分の居場所】

Q子どもの頃から美容に興味があったのですか

母親が美容院を営んでいたので、美容は日常でした。お客さんが綺麗になり笑顔になる.美容の素晴らしさや美容を介したコミュニケーションって良いなという気持ちが物心ついた頃からありました。

Q自衛隊を経て美容業界に入りました

パイロットに憧れ入隊しました。適性がなく航空管制官として働き始めましたが、無線を通した声だけのコミュニケーションに違和感を覚えてしまったのです。「リセットしなければ」と悩んで出した答えが美容師への道でした。

Q戸惑いはありませんでしたか

ギャップだらけでした。ただ、ヘアメイクをするとお客様から笑顔と「ありがとう」という言葉が返ってくる。スキルアップすればもっと喜んでもらえる。喜びが励みとなりモチベーションもどんどん上がっていく。ここが自分の居場所だと気付きました。

Q美容師からヘアメーキャップアーティストに転身されました

「美に関わる全てを提案したい」という思いが強くなり、資生堂が運営するヘアメークスクールSABFAに入り一から勉強し直しました。美は一つではないこと、誰もが唯一無二の美を持っていることを学びました。

【外面内面を全方位的にサポート】

Q資生堂に入社後、布袋さんやももいろクローバーZなど著名アーティストを数多く手掛けていますが、モデルの方とどのようにコミュニケーションを図るのですか

ライブを観たり著書を読んだり、担当者の情報を事前に出来るだけ仕入れてからお会いします。また、ヘアメイク前の環境を整えることも重要な仕事。例えば布袋さんの場合、毎回ライブの5時間前には楽屋に入ります。いかに最高の状態でステージへ送り出せるかが勝負。外面内面、全方位的にサポートできるのがこの仕事の醍醐味ですね。

Q逆に仕事の難しさは 

現場ごとに毎回違うところです。例えば、ゼロから1を産み出す作品創りは物凄いプレッシャーだし孤独な作業。自分を深く掘り下げないと出来ないし、方向性が決まったら強い意志を持って突き進まないといけない。そこがブレると中途半端なものになってしまう。思いを込めれば込めるほど質の高いものが出来るので産みの苦しみがある一方、クリエイティブの花が咲く瞬間は本当に楽しいし嬉しい。

【美容表現の可能性を切り開く】

Q「ジョジョの奇妙な冒険」をモチーフにした作品を作ろうと思った理由は

誰もやったことのないことを誰よりも早くやってみたかった。自分の大好きな漫画とコラボすることで美容表現の新たな可能性を切り開けるのではないかと思ったからです。その際、コスプレや模倣は絶対しないと誓いました。作品へのオマージュとリスペクトと愛情を込め、オリジナルを超えた「ジョジョ」の表現に挑むことで、原作漫画のファンの人にも受け入れてもらえると信じていました。

Q仕事をする際、大切にしていることは

経験上、ビューティーから遠いモノを組み合わせた瞬間、新しいモノが生まれることを実感しています。例えば、漫画やアニメをハイファッションの美とコラボさせたことで新しい価値が生まれる等々。僕自身ワクワクすること、周りをドキドキさせることをこれからも追及していきたい。

Qヘアメーキャップの持つ力とは

ヘアメイクをすることで、本人だけでなく周りの人もその人の新たな魅力に気付くことができる。自分に興味を持つこと、自分を大切にする事の重要性など、普段忘れがちなことも思い出させてくれる。身だしなみはコミュニケーションツールの一つ。キレイになった姿を見て、自分も周りも笑顔になり幸せになる。美容には、明日への活力を生み出し心を満たすパワーがあるのです。

【美容とは文化であり生き方】

Qヘアメーキャップアーティストとは 

美容とは文化であり生き方であると思っています。そして、美は一つではない。一人ひとりに寄り添い、オリジナルの美を創り上げるのが僕らの使命。

QSABFA校長として生徒に伝えたいことは 

自分がやりたいことを貫いて欲しい。「夢は必ず叶う」とは言い切れませんが、夢を持ち実現に向けて行動を起こすことが大切です。自らの可能性を見つけられるようサポートしていきたい。そのためにも、私自身が常に生徒たちに刺激を与えられる存在でありたいと思っています。

Q今後、挑戦したいことは 

沼田なら天狗、高崎なら達磨など地域の象徴的なもの、ローカルなものをビューティーに昇華できたら面白いなあと思っています。見えないモノも視覚化できるビューティーには求心力があり、人々の心を動かす力がある。美容を通して、群馬を盛り上げていけたら良いですね

文・写真/中島美江子

【プロフィル】Tadashi Harada
71年沼田生まれ。00年資生堂入社。NYやパリコレのヘア&メーキャップ、ヘアスタイリング剤の商品開発などに携わる。同社美容技術専門職のトップヘア&メーキャップアーティストとして活躍中。13年、人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」とのコラボレーション作品を発表。今春から資生堂が運営するヘア&メーキャップスクール「SABFA」第7代校長に就任。数々の賞を受賞、そのクオリティーの高さは国内外から高く評価されている。

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