青春と「戦争」


 受験生の皆さんは今、戦争の中にいます」。先日、高3の息子とともに参加した学校説明会で担当者が、今春の臨時休校や外出禁止など窮屈な生活が続いた学生へ呼びかけた。「戦争」とは「受験戦争」ではなく「ウイルスとの戦い」を意味していた。

 大正生まれで、青春が戦争と重なった時代を生きた亡き父から生前、我慢ばかりの辛い学生生活だった話をよく聞いた。コロナ禍の不自由な暮らしは、ある意味「戦時中」と言えるかもしれない。

 卒業式、入学式、修学旅行…胸躍る学校行事が次々と消え、集大成披露の場も失った若者たちの悲痛な声を、この春から夏にかけ何度も聞いた。だが彼らの、現実を受け入れ前を向こうとする姿には感銘を受けた。

 今夏、息子は最後の部活の大会が中止となった。代わりの大会はない。直後は呆然としていたが「虚しさをいつまでも引きずっていられない」と今は、後輩が出場する来年度の大会のため、仲間と共に準備を進めているのだという。

 終わりの見えないウイルスとの戦い。卒業までに平穏な日々が戻ると信じ、残された高校生活を悔いなく過ごしてもらいたい。

(上原道子)

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