高崎市歴史民俗資料館[旧群南村役場庁舎](Vol.12)

ミュージアムのもう一つの顔

昨年8月、国の有形文化財に登録された高崎市歴史民俗資料館建物外観

昨年8月17日、高崎市歴史民俗資料館(高崎市上滝町)の使用する建物「旧群南村役場庁舎」が国登録有形文化財(建造物)に登録されました。県内でも庁舎や学校などが鉄筋コンクリートで建てられ始めていた昭和30年代の数少ない大型の木造建築物です。建物全体に柱のない空間を広く取るため、大きな柱や梁を斜めに支えて補強する「方杖(ほうづえ)」などを多く取り入れ、大量の瓦や柱の重量に耐える工夫がされています。

旧群南村は、1956(昭和31)年に群馬郡滝川村と京ヶ島村が合併して成立(後に岩鼻村大字綿貫・大字栗崎、大類村大字下大類・柴崎の一部が編入)。新たな役場庁舎はその2年後、村のほぼ中央に位置し交通の便が良い当地に建設されました。

65(同40)年には高崎市と合併。役場庁舎は市の群南支所及び公民館として使用されることに。当時は、昨年9月に出土品が国宝指定された「綿貫観音山古墳」で発掘調査が実施されており、2㌔ほど北に離れた群南支所が調査拠点となっていたそうです。この建物で、発掘担当者が毎日学生たちと寝食を共にしながら調査方針を練ったというのは、つい最近知ったことです。

その後、旧群南村地域の農家が、関越自動車道建設のために土地を提供し次々と廃業。唐箕や蔟など貴重な農具や養蚕具が失われてしまうという危機感から、資料館を造って保存しようと、73 (同53)年10月1日に資料館として開館しました。農具以外にも盥や火鉢などの生活道具も豊富に収蔵しています。

当時の建築様式を残し、現在も活用されている当資料館は、昭和の町村合併を物語る木造庁舎であり、地域のランドマークとしても親しまれています。決して装飾的な建築物ではありませんが、機能性を追求し設計されている点で、希少な歴史的建造物と言えるのです。

高崎市歴史民俗資料館 学芸員
大工原 美智子 さん

だいくはら みちこ/1962年、安中市生まれ、群馬県立女子大学美学美術史学科卒。群馬県立歴史博物館解説員。多胡碑記念館学芸員。現職。

きてみて
高崎市歴史民俗資料館高崎市上滝町1058/027-352-1261/午前9時~午後4時/月曜休館/入館無料

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