アート作品に込めた本間酒造や総社の記憶

前橋ゆかりの10作家が新作発表
前橋でソウウレシ展 23日まで

「総社、そして総ての人が嬉しくなるように‐」前橋市総社町総社にある国登録有形文化財「旧本間酒造」で、かつて醸造されていた代表銘柄「惣嬉」の名を冠した展覧会「ソウウレシ」が23日まで、同酒造で開かれている。同市の弁天通りでギャラリー「ヤーギンズ」を運営する八木隆行さん(48)を始め、藤口諒太さんや後藤朋美さんら前橋ゆかりの10作家が同市の「まえばし市民提案型パートナーシップ事業」として企画。作品展示やイベントを通して旧本間酒造や総社の歴史、地域の魅力を発信している。(中島美江子)

1923年(大正12)に建てられた旧本間酒造は69年(昭和44)まで日本酒を醸造、その後、仕入販売に移行し2014年まで営業を行っていた。市内に現存する数少ない造り酒屋の建物で、2016年に主屋と本蔵が国登録文化財に指定。現在は、地域住民による野菜販売やイベント開催などに活用されている。

今展の参加作家は本間酒造の子孫や地域の人へのインタビューを重ね、そこから得たものを踏まえアート作品に昇華させた。

本間酒造の本蔵と呼ばれる「酒蔵」に、録音された人々の音声が響きわたる藤口諒太さんの「心身の破壊と再生」

展示会場には、実際に使われていた酒樽をモチーフにした加藤アキラさんの立体を始め、同酒造の庭の植物などを用いた榎本浩子さんのインスタレーションや映像、特殊な撮影技法で造り酒屋に残されていた道具類などを写した木暮伸也さんの写真、敷地内の梅の切り株を掘り起こす事前ワークショップをもとに制作された小田久美子さんの記録作品、建物の一角をカフェに見立て来場者と即興演劇を行う羽山まり子さんの体験型作品など、多彩な約10点が点在。作家独自の視点と丹念なリサーチから生まれた作品群は、本間酒造や総社町、そこに暮らす人々が長年にわたり蓄積してきた記憶や痕跡を鮮やかに浮かび上がらせている。同展を企画した八木さんは、「作家たちは、本間酒造の関係者や地域の人たちと関わりながら、作品を創り上げました。この場所この土地ならでは多彩な表現を楽しんで欲しい」と来場を呼び掛ける。

なお、23日午後1時半からは前橋を拠点に活動する著名アーティスト白川昌生さんと気鋭アーティスト田中功起さんによるトークイベントも。参加無料だが入場料(一般500円、総社町在住者と高校生以下無料)が必要。同展事務局(050・5362・3976)。

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