学びの選択肢広がる

オルタナティブスクール 3校始動

小・中学生の不登校が社会的問題となる中、子どもの個性や自主性を尊重した学びの場として広がりを見せているのが「もう一つの学校」という意味を持つ「オルタナティブスクール」だ。県内でも今春3つのオルタナティブスクールが始動。公教育の枠組みにとらわれない独自の教育法で、不登校の受け皿としてだけではなく、新たな学びの選択肢としても注目を集めている。(林道子)

オルタナティブスクールとして開校した百の森学園(藤岡) 写真:阿部 功

※オルタナティブスクールとは
一般的にフリースクールが不登校の子どもを対象とした学校という認識が強いのに対し、オルタナティブスクールは既存の学校とは異なる「もう一つの学び」を選択するというポジティブな側面を持つ。一部の認可校を除き学校教育法に基づく学校ではないため、子どもたちは原則として地域の公立学校に籍を置く。オルタナティブスクールでの活動は現在のところ欠席扱いになることが多いが、学校長の判断によっては出席として認められるケースも。2016年に成立した不登校の子どもの支援のあり方を規定した法律「教育機会確保法」では、学校への復帰を前提としないで、フリースクールなど学校外で学ぶ機会を認める方針を示している。

百の森学園(藤岡市)

子どもたち同士が教えあう姿も 写真:阿部 功

藤岡市鬼石の酒蔵跡地や古民家を活動拠点に、4月に開校した「百の森学園」。小学1年生から6年生まで13人が入学。不登校の児童だけでなく、学校の理念や教育方針に惹かれて入学を決めた子どももいる。

開校日は平日の午前8時半から午後3時。宿題やテストはなく、異年齢の子どもたちが共に学ぶ。算数の文章問題を、自分なりの絵を描きながら解く「どんぐり問題」など、考える過程を大切にする教育が特徴。算数や国語は一人ひとりのペースで課題に取り組むが、自然と上級生が下級生に教える姿が見られるようになった。馬とのふれあいや、週3回の昼食作りに加え、活動を応援する20人以上の有志による木工作や音楽などの特別授業も行われる。

発起人の一人である髙村木綿子さん(藤岡市)は、玉村町のオルタナティブスクールで、自信を失っていた子も含め、すべての子どもたちがいきいきと学び自立していく姿を目の当たりにし、「子どもが主役の学び場を増やしたい」と思いを強くした。開校から2ヶ月、子どもたちと向き合いながら試行錯誤の毎日だが、子どもたちの顔つきが変わってきているのを実感していると言う。髙村さんは「子どもも大人も共に学び、成長していきたい。誰もが自分の居場所だと胸をはれる場所を作りたい」と話す。
■藤岡市鬼石539 きぬや内 メール✉ 100nomori@gmail.com

Small School MIRAI (高崎市)

子どもの「やりたい」をスタッフがサポート

公立中学校で19年間教鞭をとった坂本健吾さん(高崎市)が開いた「Small School MIRAI」。住宅街の民家をボランティアの手を借りて綺麗にリフォーム。開校日は火曜・木曜の午前9時~午後2時、小・中学生5人が通う。

「学校は社会の中でよりよく生き抜くための手段の1つ。学校に馴染めない子どもには、別の形で生きる力を育む場所があっていい」と坂本さん。自己肯定感を育むことに重きをおき、一人ひとりの「やりたいこと」を出し合って1日の計画を立てる。工作や自然散策、コミュニケーションを図るカードゲームなど、体験型学習がメイン。「カレーを作りたい」となれば、食材の買い出しから調理まで子どもが主体となって行う。坂本さんは「自分に自信がつき、社会との繋がりが見えてくれば、学ぶ意欲も湧いてくる」と話す。

母親と離れる不安から学校に行けなかったという小学生男児の保護者は、「ありのままを受け入れてもらい、安心して過ごせる場所になっている。自分のペースでやりたい事を見つけてくれれば」と居場所ができたことに安堵の表情。小学3年生の娘を通わせる保護者は、「普通の学校ではできない体験を通して、自分の可能性を伸ばしてほしい」と期待を寄せる。

子どもの不登校に悩む保護者に向けた相談会も開催している。
■高崎市棟高町610-3 メール✉ small.school.mirai@gmail.com

 

un chat (アンシャ) (桐生市)

校舎になっているのは、元々はわたらせ渓谷鉄道のお座敷列車

マルーン(えんじ色)の客車を校舎にした「アンシャ」。来春の正式開校を目指し、4月にプレ開校した。開校日は月曜・木曜の午前9時~午後3時半で、水曜はオンライン授業を実施。7人の小学生が通う。

代表の倉嶋仁美さん(伊勢崎市)は、公立小学校で非常勤講師として働く中で、学校に馴染めない子どもの姿も多く目にしてきた。「正しい・正しくないではなく、それぞれにあった学びの選択肢が必要」。自身の子どもの不登校も、スクール設立を後押しした。

「一人ひとりとじっくり向き合いたい」。倉嶋さんが大切にしているのは、子どもたちとの対話と、生活体験に沿った学びの提供だ。近くのダムまで散歩に出かけた際は、「この水はどこから流れてきたのかな?」との一言をきっかけに、地図で源流を調べてスケッチブックにまとめた。泥だんご作りでは粘土質と砂質の手触りの違いに気づき、はかりを使って重さを比べるなど、子どもたちの興味関心を丁寧にすくいあげ、学びを深めている。

「子どもたちが学びたいところで学べる選択肢が広がれば」と倉嶋さん。子どもたちが籍をおく学校にも定期的に近況を報告し、関係の構築に努めている。
■桐生市新里町鶴ケ谷 同校(090-6138-8827

掲載内容のコピーはできません。