4つのテーマ、11作家 それぞれの「めざめとゆめ」

同時開催「生誕100年 笠木實と没後30年 友人、清宮質文」

山口薫《(高崎市役所玄関壁画構想)―朝、昼、晩》(1955年 水彩 高崎市美術館蔵)

開館30年を迎える当館では、近年寄贈寄託された作品を「群馬、高崎ゆかりの作家たち」「魂の印象派 木村忠太」「鶴岡政男の素描」というテーマで紹介する「新収蔵・寄託作品公開 心からのおくりもの」と、アーツ前橋、県立近代美術館、(公財)大川美術館、高崎市美術館収蔵作品による「生誕100年 笠木實と没後30年 友人、清宮質文」という、全体で4つのテーマ、11名を紹介する展覧会を開催しています。

最年長の井上房一郎と最年少の和南城孝志に約50歳の年齢差がありますが井上がパリで絵画を、和南城がローマで彫刻を学んだように、同時代の日本人は西洋に憧れ、西洋の素材や技法に取り組みました。そして、井上が伝統的な漆塗りを用いてモダンな幾何学模様の盆を制作し、和南城がイタリア大理石に、郷里、桐生の織機の形を刻んだように、西洋の物の見方や考え方に出会い、それぞれ自分をみつめなおします。セザンヌの絵から自我や社会創造に目覚めた井上と、入れ違いに渡仏し、同じセザンヌの絵に故郷への想いと、東西を越える感動を実感した山口薫や、渡仏後、望みながらほとんど帰国せず、変化する光、うつろう心を色と線に重ね、東西を一つに結ぼうとした木村忠太など、西洋に刺激を受けた一人ひとりの「めざめとゆめ」が想像されます。

笠木實《散歩道》(2015年 油彩 高崎市美術館蔵)

一方、フランスに渡れなかったゆえに、清宮質文は木版を刻み続け、水彩で和紙に摺り重ねる木版画や、最晩年のガラス絵に心の風景や思い出だけを結晶させました。その清宮がうらやむほどテクニックがあり、渡仏も果たした笠木實は、体の自由を失ったのち、ふるえる筆を布巾に持ちかえ描きたい一心を込めました。木立などの身近な風景や思い出だけを描く最晩年の作品は、絵の向こう側へ、まるで旧友、清宮の待つ彼方への奥行きを深め、浄らかな光に充ちています。作品だけでなく、10代から続く清宮と笠木の心温まる、時に微笑ましい交友がしのばれる貴重な資料もぜひご覧ください。

 

高崎市美術館学芸員
住田 常生 さん

成城大学文芸学部芸術学科卒業。2000年より高崎市美術館に勤務。専門は日本近現代美術。「生誕100年 清宮質文 あの夕日の彼方へ」(2017年)、「没後50年 山口薫先生からきみたちへ」(2018年)、「モダンデザインが結ぶ暮らしの夢」(2019年)などを担当

■高崎市美術館(同市八島町110-27)■027-324-6125■6月13日まで■一般300円、大高生200円 (中学生以下、65歳以上無料)■午前10時~午後6時 (金曜日のみ午後8時まで)■月曜日および祝日の翌日は休館(5月3日開館、同6日休館)■5月15、29、6月12日午後2時から、学芸員による解説会を実施。いずれも観覧料が必要

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