作家夫妻が紡ぎ出す作品世界を楽しんで

「三輪洸旗・途道展ー富岡から世界を紡ぐー」

㊨三輪途道《午後は鮨八で待つ》個人蔵
㊧三輪洸旗《白のチューリップ#3》作家蔵

当館では、三輪洸旗(こうき)・途道(みちよ)夫妻の作品を紹介する企画展を開催しています。三輪夫妻は当館のある富岡市に隣接する下仁田町にアトリエを構え、これまで長く作品制作を続けてきました。本展では、当館のほぼすべての展示室を使い、2人の代表作から新作までおよそ130点を展示しています。これほどの規模で行うのは、当館では福沢一郎以外の個人の展覧会としては初めての試みです。また、これまで個別に作品を発表することがほとんどだった夫妻にとって、県内での2人展は初めてになります。

公私におけるパートナーである2人の作品は、共に木を主な素材とし、同じアトリエから生み出されたものですが、その性格は全く異なります。自然と人間の関係性をテーマとする洸旗さんの作品は、チューリップなどの植物や、群馬の山々などの風景をモティーフとした立体と平面で構成されています。一見シンプルで寡黙な印象のある作品が並びますが、それぞれの作品とじっくり対面することで、見るものの想像力をかき立て、様々なイメージを呼び起こします。また、作家によって熟考された展示空間は、それ自体が作品となって皆様を迎えてくれることでしょう。

一方、途道さんは長年、木彫による肖像彫刻を手掛けてきました。本展でも、作家の家族や知人、日用品や動物たちをモデルにした作品を多数展示しています。本物そっくりに彫り上げる技術の高さはもちろんのこと、モデルの性格や人生といった内面まで感じさせる表現力は、見るものを惹きつけてやみません。また本展では、作品の制作と並行して途道さんが長年取り組んできた仏像の制作など、文化財の仕事についても紹介しています。現代作家としてだけではない、途道さんのもうひとつの顔を知っていただけることと思います。

本展では2人の作品以外にも、洸旗さんが指導する健大高崎高校美術部の展示や、途道さんが出版し、クラウドファンディングを行っている書籍『祈りのかたち』のパネル展示なども同時開催しています。2人が紡ぎだす、対照的ながら静かに呼応し合うような作品の世界をお楽しみいただけましたら幸いです。

富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館 係長代理(学芸員)
肥留川 裕子さん

富岡市出身。群馬大学大学院教育学研究科修了。2010年から富岡市立美術博物館に勤務。常設展のほか企画展「郷土の作家展」「福沢一郎生誕120年展」などを担当

富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館(富岡市黒川351・1)■0274・62・6200■一般800円/大学・高校生400円/中学生以下無料■11月7日まで■午前9時半~午後5時(入館は午後4時半まで)■月曜休館(休日の場合は翌日)■関連事業・作家によるギャラリートーク 三輪途道=9月26日、三輪洸旗=10月17日 各午後2時から。※事前申し込み不要(先着30人 当日正午から整理券を配布)、参加無料(ただし観覧券が必要)■※状況により、変更・中止となる場合があります

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