ドーナツ的スイートな場づくり(vol.207)

1階にはお店、2階はシェアオフィスが入ったCHOCOLATE

街なかには「空き家」と呼ばれる建物がある。昔どんなお店だったのだろう、どんな楽しい会話が繰り広げられていたか、そんな事に思いを巡らせると、その呼び名の持つ少し苦い印象とは違って、とてもスイートな気分になる。もう「空き家」なんて呼び方はやめて建物の特徴から連想するスイーツみたいな呼び名にしたらちょっと面白い。いつしかそんな視点で建物を見るようになっていた。そこに新たな活動をインストールして、もっと面白くしよう。そんな発想で合同会社ドーナツ(前橋市千代田町)を起業した。太い共感の輪と、スイートな活動によって「空き家」をみんなから愛されるドーナツのような場所に変える。そんな会社です。

最初に手掛けたのは、小さな庭のある古くて傾いた白い木造住宅。「白い角砂糖みたい」という印象から「SUGAR HOUSE(シュガーハウス)」と命名。誰も見向きしなかった建物は今では若者の手によりDIYされてシェアハウスとなり、草刈された庭はBBQ場になった。

ふたつめは前橋まちなかエージェンシーMMAで運営している複合施設「comm」の隣、外壁が真っ黒だった物件。「ビターチョコみたい」という印象から「CHOCOLATE(チョコレート)」という屋号。中央通りアーケードの真ん中なので1階にはお店を入れたいと当初から考えていた。賑わいの演出が難しい2階はシェアオフィスに。そんな構想をしていた時に今の出店者や入居者たちと出会い、仲間達のDIYによって手作り感満載な建物に生まれ変わった。

ひとりでは難しいSDGsも、街や建物の再生も全ては共感の輪があってこそ成せること。私はドーナツ的スイートな場づくりを通して前橋のビジョン推進に取り組んでいく。

合同会社ドーナツ 代表社員CEO 一社)前橋まちなかエージェンシー(略称MMA)
橋本 薫さん

【略歴】77年前橋市生まれ。建築家を生業としつつ、11年の震災を機に地域活動を始める。16年にMMAを設立し代表理事を務め、18年に「comm」を設立。21年、遊休不動産活用の社会課題解決のため合同会社ドーナツを設立し代表社員CEOを務める。前橋工科大学総合デザイン工学科非常勤講師。

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