賢治の言葉  [群馬県に緊急事態宣言が出されてから20日以上が経つ…]

群馬県に緊急事態宣言が出されてから20日以上が経つ。不要不急の外出自粛が続く中、仕事で立ち寄る文化施設は日々のストレスをしばし忘れさせてくれる貴重な場所だ。先日、訪れた土屋文明記念文学館でも、開催中の企画展「宮沢賢治‐みんなのほんとうのさいわいをさがしに‐」に心洗われた。

「雨ニモマケズ」が記された手帳(複製)や「春と修羅」の初版本、直筆原稿、幼少期から晩年までの写真などが並ぶ会場は、「銀河鉄道の夜」の空をイメージした爽やかな青色に包まれている。中でも胸に迫ってくるのが、壁いっぱいに埋め尽くされた賢治の言葉の数々だ。

「誰だって、ほんたうにいいことをしたら、いちばん幸なんだねえ」「ぼくはきっとできるとおもふ。なぜならぼくらがそれをいまかんがへてゐるのだから」「なぜ人のことをうらやましがるんだい。僕だってつらいことはいくらもあるんだい。お前たちにもいゝことはたくさんあるんだい」 80年余の時を経て届けられたメッセージは、コロナ下に暮らす私たちへの温かいエールにも聞こえる。

みんなで幸せになろう―苦難にあっても希望を追い求めた賢治の生き方から学ぶことは多い。空に煌めく賢治の言葉を眺めながら、「本当の幸い」を探しに出掛けてみませんか?

(中島美江子)

掲載内容のコピーはできません。