前橋市粕川歴史民俗資料館  [馬型埴輪(うまがたはにわ)](Vol.17)

「ぐんまちゃん埴輪」出土の白藤古墳群とは?

白藤古墳群Ⅴー4号古墳出土の馬型埴輪。県のマスコットぐんまちゃんに似ていることから「ぐんまちゃん埴輪」と呼ばれている

「ぐんまちゃん埴輪」として一躍有名となったこの馬型埴輪。鼻から尾の先まで62・4㌢、足先から耳まで50・4㌢、胴体の最大幅25・8㌢で、足が短くずんぐりとしたプロポーション。おまけに平たい顔の正面についたどんぐり眼が特徴的で、まさしく「ぐんまちゃん」です。さらに馬を制御するための馬具の表現も至極簡略化。当館に一緒に展示してある馬型埴輪との差は一目瞭然です。是非、来館し近くで比較してみてください。

さて、埴輪本体について触れられること多々ですが、出土した「白藤古墳群」についてはあまり知られていません。1982 (昭和57)年に当館の北東約300㍍に位置する膳八幡神社北側で、直径21・6㍍程(周堀幅含む)の円墳(Ⅴ―4号墳)から発見されました。墳丘に横倒しとなった状態で出土したことから、円筒埴輪と共に古墳に立っていたと推定されます。また、古墳の周堀を埋める土には6世紀前半の榛名山二ツ岳の爆発による火山灰が認められ、周堀の底からは古墳時代後期前半の特徴を持った土師器の坏6点と坩(小型の壺)1点、鉄製の石突きなどが狭い範囲でまとまって出土しています。

白藤古墳群は52基の古墳で構成されますが、すべて円墳で規模はほぼ均一です。このうち7基が古墳時代後期の横穴式石室を持ち、残りは総て墳丘が低く、直径20㍍前後の小さいものでした。ぐんまちゃん埴輪が出土したⅤ-4号墳のあたりには、古墳の周堀同士が接するように密集しています。また、周堀を持たない石室だけの古墳(小石槨墓)も19基検出されました。

このように遺物を持つ古墳と持たない古墳、周堀を持つ古墳と持たない古墳など構造はいろいろで、埋葬された人や集団に格差があったと考えられます。これは、古墳の「大開発時代」とも言われる5世紀から6世紀前半に、赤城山南麓地域の開発を担った集団の姿を反映しているのかもしれません。

前橋市教育委員会文化財保護課 嘱託員
小島 純一 さん

こじま・じゅんいち/1956年桐生市生まれ。79年明治大学史学地理学科考古学専攻卒。勢多郡粕川村教育委員会(当時)勤務。2006年より前橋市文化財保護課。17年3月定年退職。20年より現職。

きてみて
粕川歴史民俗資料館/前橋市粕川町膳48-1/027-230-6388/午前10時~午後4時/休業日:毎週火曜(祝日の場合は開館し、その後の休日でない日)、年末年始(12月28日~翌年1月4日)/入館無料/9月5日まで企画展「前橋城大手門現る―発掘された前橋城―」開催中。大手門跡の調査資料を中心にこれまでに発見されている前橋城の遺構について紹介

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