野球の神様 [10日に開幕した第103回全国高校野球選手権群馬大会は…]

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10日に開幕した第103回全国高校野球選手権群馬大会は、2年ぶりの夏の甲子園出場をめざす球児たちの熱戦が繰り広げられています。新型コロナウイルスの感染防止対策で細心の注意を払いながら開かれている今大会。ベンチでも応援席でも制約が設けられています。

学校関係者のスタンドでの観戦は、各校とも部員や保護者、吹奏楽、チアリーダーを含めて400人まで。大声を出しての応援は認められず、校歌や応援歌も歌えません。それでも一投一打に魂を込める選手たちの快音や、演奏に合わせたメガホンをたたく音が響きわたる、かけがえのない夏です。

梅雨前線に伴う温かく湿った空気と上空の冷たい空気が混ざり合い、急な土砂降りで雨天再試合になるゲームも相次いでいます。雷雨による長い中断の後、流れが変わった試合も。

雨脚や雷鳴が弱まり、なんとか試合を再開できるとなれば、グラウンドの水はけを待って対戦中の両チームの控え部員や、各球場の「補助員」として雑務を担うその日は試合のない地元チームの部員らが出動。県高野連の先生方と総出で泥だらけになってトンボで水をはき、スポンジで吸水し、新しい土を運んでラインを引きます。

点差も敵味方もなく、思いはただ一つ。3年生にとっては最後の夏。なんとか良い条件で試合をさせてあげたい――。そんな裏方のみんなの一挙手一投足、静かな思いやりを「野球の神様」がきっと見ています。出場選手だけの夏じゃない。高校野球って、いいね。
(朝日新聞社前橋総局長 本田 直人)

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