「物語の始まり」に[4月14日号]

新年度、当総局にも新しい仲間が加わりました。入社2年目の記者2人です。どうぞよろしくお願いします。若者に出会う春は、自分はなぜ記者になったのかを振り返ることが多くなります。私の場合、大学時代のアジア放浪が決定打でしたが、原点は関西の実家で購読していた新聞です。
70年代半ばから80年代半ば、読売新聞大阪本社の紙面に掲載された大型企画「戦争」やコラム「窓」などから、庶民や差別される側の視点を意識づけられました。大阪社会部の記者たちが毎夏催した「戦争展」も記憶に残ります。名物社会部長だった黒田清さんや記者の思い、息づかいを感じました。
高校時代に本多勝一さんの「カナダ=エスキモー」を課題図書に出されて読み、これが仕事なら記者は楽しそうだなぁと考えたことを思い出します。筑紫哲也さんも雑誌やテレビで活躍。入社後に先輩から薦められた本は本田靖春さんの「警察(サツ)回り」でした。
年月を経ていま、記者を目指す若者たちが記者像を描く本として挙げるのは、断トツで「クライマーズ・ハイ」。言わずと知れた横山秀夫さんの作品です。その横山さんが代表作誕生の背景を語る連載「横山秀夫 物語の始まり」を、今月6日から朝日新聞群馬版で始めました。
初回から、痛いところを突かれました。新聞は「取材したことしか字にできない」ため、伝えるのが苦手なことがある、という指摘です。恐らく記者の多くが感じる葛藤。クライマーズ・ハイと似た読後感を早くも感じる回となりました。月1回の掲載が、これから私も楽しみです。(朝日新聞社前橋総局長 岡本峰子)