「秘密のケンミンSHOW」プロデューサー 清水 紀枝 さん

「番組を通して自分たちの足元を見つめ直すことの大切さ、新しいことを知る喜びなどを感じてもらえたらうれしい」と話す清水さん

「『楽しかった』で終わりではなく『なるほど』と記憶に残るような番組を作っていきたいですね。」

 

全国の多様な食文化や風習、県民性などを紹介するテレビ番組「秘密のケンミンSHOW」(以下「ケンミン」)。特に46道府県の出身者を集めて繰り広げられるトークや、地道な裏付け取材で集められた独自の地域ネタが人気だ。お茶の間に愛されるバラエティ番組制作に、プロデューサーとして放送開始時から携わる清水紀枝さんに、番組や仕事への思い、群馬県民の魅力などを聞い

【記憶に残る番組作りたい】

Q「ヒミツ」は12年目を迎えます

正直、こんなに長く続くとは思っていませんでした(笑)。当時、県民性にスポットを当てたバラエティ番組は珍しく、あるようでなかったのが良かったのでしょう。出身地の「あるあるネタ」は同郷なら親しみを覚えるし、地元以外の人なら新鮮さを感じてもらえます。番組の要である街頭インタビューをする際、東京目線にしたのも地方との距離感が出て視聴者の方に受けたのではないでしょうか。

Qどんなところを楽しんで欲しいか

日本って小さな島国ですが、本当に土地土地で風習も文化も全く違う。今まで普通だと思っていたことが他県だとそうでなかったり、地元でも分からないことはいっぱいあります。私自身、毎回驚きの連続。自分たちの足元を見つめ直すことの大切さ、新しいことを知る喜びを感じてもらえたら良いですね。

Qどのように制作しているのでしょう

20~60代まで50人近いスタッフに加え、リサーチ会社の担当者や放送作家さんと週2回会議をしています。毎週、集まってくるネタは50本位ですが、1回の放送で扱うのは3~4本。「本当にネタにできるのか」「面白い内容になるのか」あらゆる角度から精査して選びます。例えば「群馬県民はギャンブルに寛容」というネタがあがったら、歴史的背景などをリサーチした上で不特定多数の人に取材し裏どりをします。時間はかかりますが地元の生の声が何より重要。そこを怠ると面白い番組は絶対に出来ません。

Q制作する上で気を付けていることは

それぞれの県に昔から根付いている風習や文化を紹介するのが番組の大きなコンセプトですが、地方独自の伝統食にしてもただ紹介するのではなく実際どのように食べられているか、また若い人にどう受け継がれているのかなど、常に「今」を意識しています。新しい切り口を見せていかなければ飽きられてしまいますが、ぽっと出のまちおこしネタは扱いません。鉄板と意外性のバランスも大切にしています。観た後、「楽しかった」で終わりではなく「なるほど」と記憶に残るような番組を作っていきたいですね。

Q今後、取り上げたい群馬ネタは

「かかあ天下」。言葉のインパクトが強く「群馬の女性は怖い」と誤解している人も多いので、そのイメージを払拭したい。ただ、「群馬の女性は働き者」というのを映像化するのは難しく、悩ましいですね(苦笑)。また、上毛かるたや焼きまんじゅうなど既に取り上げた鉄板ネタをもう一度見直し、よりディープな内容を紹介できればと思っています。

Q番組では群馬ネタが多い気がします

「出身地だからですか」と良く聞かれるのですが単純に面白いからだと思います。会議で群馬ネタが出た時、「変わってる」「笑っちゃう」と言われることが多い。いじりやすい県民性も大きいかもしれませんね。

【予測できないところが面白い】

Qプロデューサーの仕事とは

予算から企画構成、キャスティング、放送時のコンプライアンスまで番組制作に関わる全ての責任を担っています。「伝えたいことは何か」「時代を捉えているか」「視聴者ニーズに合っているか」 制作現場のリーダーであるディレクターと様々な角度から検討しながら作っています。県の代表として誰に出演してもらうか、地元ネタを誰に語ってもらうか。人選を間違えると「熱」が伝わらないので、キャスティングには特に気を遣いますね。

Q仕事のやりがいは 

観てくれる方はもちろん、取材先の方々など関わった人たちから「良かったよ」「楽しかった」と喜んでもらえるとうれしいですよね。「これは受ける」と思って作っていますが実際、世に出てみないと分からない。反応が予測できないところが怖くもあり面白いところ。インターネットの普及などでテレビを取り巻く環境は激変していますが、その中でもテレビでしかできないことを模索し続けていきたいですね。

Qプロデューサーとして心掛けていることは

番組制作の命は情報収集。テレビだけでなく新聞や雑誌、ネットなどのチェックは欠かせません。「目新しいモノは何か」「旬の人は誰か」 全方位、常にアンテナを張るようにしています。ただ、自分一人では限界があるので色んな人から新しいネタを仕入れるようにしています。

【全てが心地よい場所】

Q故郷・群馬とは

豊かな自然、新鮮な食べ物、のんびりした時間の流れ、全てが心地良いですね。東京は仕事場でもあり、常に気を張っているため疲れることも多い。心身を癒すため、2カ月に1度は地元に帰っています。素に戻れるというか、自分の原点を思い起こさせてくれる場所ですね。

Q群馬県民の魅力とは

とにかく人が良いですよね。街道筋だったという歴史的背景もあるのでしょう。排他的でなく、よそから来た人を快く迎え入れる気風があります。裏表がなくて面倒見が良くて義理人情に厚い。その分、人間関係は密というかウエットになりがちかもしれませんが(笑)。「西の大阪 東の群馬」と番組内企画で取り上げたように明るいキャラの人が多く、番組の街頭インタビューでも群馬と大阪は他県に比べて「撮れ高」が良い。「面白いことを言ってやろう」というサービス精神も旺盛なので助かっています。一方、地域愛は強いけど地元をアピールする必要性を感じていない人も多い気がするので、もったいないなと思いますね。

Q群馬の皆さんにメッセージを 

取材で全国を回ってみて感じるのは、群馬の「豊かさ」。人も土地もピリピリしていない。経済的に余裕があるというのとはちょっと違う。群馬には生きていく上で、「大切な何か」が脈々と受け継がれている気がします。そこはもっと誇っていい。微力ではありますが、その「豊かさ」を番組ですくいあげ、群馬の魅力を広く全国に発信していけたらと思っています。

文・撮影 中島美江子

【プロフィル】Shimizu Norie
1973年伊勢崎生まれ。伊勢崎女子高(現・伊勢崎清明高)、関東学院大を経て96年にハウフルス入社。「どっちの料理ショー」「出没!アド街ック天国」など、数々の情報・バラエティー番組の制作に携わる。2007年のレギュラー放送開始時から「秘密のケンミンSHOW」のプロデューサーを担当。東京在住。