「 The rising generation 17  福井諭史 山田美智子  」

会場の展示風景。壁面の鉛筆画が福井さん、手前の立体が山田さんの作品
会場の展示風景。壁面の鉛筆画が福井さん、手前の立体が山田さんの作品

様々な角度から、観て、感じて、考えて

現在、上昇中の作家を紹介する企画展の17回目になる今回は、人物と対峙する2作家を紹介しています。人と人とのコミュニケーションについて、様々なことが語られる現代〝人〟に興味を持ち制作し続けている作家らは、何を考え、何を伝えようとしているのでしょうか。

1970年代生まれの作家らが子どもの頃の電気通信手段と言えば、ダイヤル式の黒電話が各家庭に1台。次第にプッシュボタン式電話になり、留守番電話、ファックス付き電話になりました。そして、作家らが学生時代を過ごした1990年代は、伝達ツールの個人所有化が発展した時代です。当初はポケベル、数年後には携帯電話が急速に一般化しました。現代に至っては、小さなパソコンとでも言えるようなスマートフォンが台頭しています。じっくりと他者を目の前にして顔を見る、手を握る、眼を見て話す…そんな光景が珍しくもある今日この頃です。

福井諭史さん(76年渋川生まれ、2002年多摩美術大学卒業)の作品は、紙へ主に鉛筆で人物を描いています。福井さんの作品を観ると、とてもリアルに描かれているというのが第一印象なのですが、すぐに単純な写実ではない空気に包まれます。その手法を聞いてみると、特定のモデルがいながらも実際に描く時、目の前にモデルのいない状態で描くと言います。実際にモデルとしたい人に声をかけ、話を聴き、何枚もの写真を撮らせてもらう。そして、その写真をアトリエに張り巡らせ〝その人〟を描く。それでも写真を見て写し取っているわけではなく、写真を傍らに福井さんの中に存在している〝その人〟を描き出しています。

一方の山田美智子さん(71年太田生まれ、92年女子美術短期大学卒業)の作品は、主に塑造(粘土)で制作された人物像を最終的には樹脂(FRP)に置き換え、彩色をして仕上げています。古くから伝わる具象彫刻と言われているものは〝粘土で造る人間〟が一般的です。それも女性像が多く、造っているのは男性作家…初めは〝女性作家が造る女性像〟という、実体と精神が錯綜する中で制作していました。そして、結婚、出産を経験した後は、子どもの存在を通して〝象徴としての子ども〟と向き合い制作をしています。

絵画には色があり、彫刻には色がない…というのが、一般的な印象だと思いますが、今回はモノクロの絵と、カラフルな彫刻…2作家の様々な差異が、〝人物〟〝美術〟という共通項で何を感じさせてくれるのか。1つの空間に展示される2人の作家の展覧会……観て、感じて、考えて様々な角度からお楽しみください。

 

渋川市美術館・桑原巨守彫刻美術館
学芸員 須田 真理 さん

女子美術大学大学院修了。00年12月開館の渋川市美術館・桑原巨守彫刻美術館開設準備から携わる。現在、常設展や企画展などを担当

■渋川市美術館(同市渋川1901の24)■0279・25・3215■入場無料■来年1月13日まで■午前10~午後6時■火曜、年末年始(12月27日~来年1月4日)休館