もう一つのふるさと[5月17日号]

生まれも育ちも群馬だが、実はもう一つ故郷と呼べる場所がある。母の実家がある秋田県湯沢市だ。岩手県と宮城県、山形県の県境近く、山間部にたたずむ実家の周囲にはのどかで豊かな自然が広がっている。幼い頃、休日に家族で訪れるのが待ち遠しかった。春は山菜採り、夏は清流で水遊びや魚釣り、秋は小安峡で紅葉狩り、冬は一面の銀世界で雪合戦など、集まった従妹たちと四季折々の遊びを楽しんだ。

5年前のGW、祖父母の法事を兼ね久しぶりに母と帰省した。当時、父が入院中だったこともあり母はあまり気乗りしなかったが、「気分転換になれば」と説得し半ば強引に連れてきた。兄弟と再会した母は故郷の空気に触れ、日頃の介護疲れから解放されたようで終始、リラックスした表情だった。

実家近くには、秋田で最古と言われる秋ノ宮の温泉郷や日本三大うどんの一つ「稲庭うどん」など名所名物が満載。観光や買い物を満喫し、私も群馬とは違うもう一つのふるさとに心癒された。それ以来、母とのタイミングが合わず秋田行きは実現していない。

我が家の食卓には、実家を継いだ叔父と叔母が丹精込めて作る「あきたこまち」のご飯と手作り麹味噌を使った味噌汁が毎日並ぶ。もう一つのふるさとの味は、かみしめるごとに温かい気持ちになる。今年は叶わなかったが、長い休みが出来たらまた母と一緒に秋田で贅沢な時間を過ごしたい。

(森作理恵)